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第232話 15-57

カツラはタイガがチーゼルとの一連のやり取りを見て腹を立てているのだとわかった。色を濃くしたブルーの瞳に見つめられ、カツラの歩みが一瞬止まる。 「君さ、1人?」 背後から声をかけられカツラは振り向いた。チーゼルと踊っていたカツラに目をつけていたのだろう、あかぬけた金髪の男がいた。男は鍛え抜いた体に自信があるのか、黒いタンクトップ姿だ。男の隣にはもう一人男がいた。 「俺たち初めてこの店に来たんだけど。みんな不思議な奴らばっかりだし。君みたいな子と一緒に飲めたらいいなって。一杯奢るから一緒に楽しまない?」 この二人は連れ同士のようだ。後に話しかけてきた男はきちっとしたスーツ姿。黒髪にノーフレームの眼鏡の奥から覗くグレーの瞳が切れ者のような雰囲気を出していた。 カツラは彼らは自分のことを女だと思って声をかけてきているのだとすぐに悟り、驚かせてやろうと思った。店でするような客向けの最高の笑顔をほのかに浮かべる。その瞬間、目の前の男たちは自分たちの誘いにかかったと思ったのだろう。彼らの表情がパッと明るくなった。 カツラが言葉を発しようと口を開きかけたとき、後ろからグイと腕をつかまれる。驚いて捕まれた腕のほうを見ると、そこにはタイガがいた。 「カツラ、戻ろう」 せっかくものにしかけた獲物を横取りされると思いスーツ姿の男が息込んだ。 「おいおい。彼女は俺たちとすごすんだ」 しかしタイガも負けじと言い返す。 「俺の連れだ」 「は?」 納得のいかないタンクトップの男が喧嘩を売るように前に歩み寄る。 「なんだよ?」 タイガも引かない。最初にカツラに声をかけてきた男はガタイはいい。しかし、タイガもガタイはいい。そしてかなりの長身だ。タイガは見下ろすように2人を睨みつける。一瞬男はひるんだが、2対1で勝ち目があると思い直したのか後に引く気はないようだ。お互い睨み合い、一触即発の雰囲気になった。 「なぁにやってんだ?頼んだ酒ができたから、早く戻ってこいよ?」 タイガの背後からゼファーが援護にかけつけた。予想外の援護に男たちは眉根をよせる。ゼファーも体育会系でガタイはいい。 「ほら、行くぞ?」 勝負ありとみて、その場から立ち去ろうと、ゼファーがタイガとカツラを促した。 2人の男は恨めしそうに立ち去る3人を見ていた。スーツの男はタンクトップの男の肩をトントンと軽くたたき、その場から立ち去る。 タンクトップの男はカツラの後ろ姿をずっと見ている。歩くたびに左右に揺れる形の良い尻を見ていると、どうしても諦めきれない。今夜もしかしたらこの美女とベットを共にできるかもしれない。僅かな肌しか隠していないあの服を脱がし、生まれたままの姿の女を下に組弾き中を味わい尽くしたいという欲求に駆られた。男は足早にカツラに歩みよる。 「な?」 男はカツラの手をとり、自分の方に引きよせ耳元で囁いた。 「連絡先教えてほしい。もっと話したい」 男は何とかしてカツラの気を引こうと必死にアピールした。カツラはまだ引かない男を信じられないという目で見、片眉をあげた。もうこれだけで男はカツラのとりこだった。美しい翠の瞳に見つめられ、すっかりたらしこまれてしまった。 「そんなにヤリたい?」 カツラは男の耳元に口を近づけヒソヒソ声で聞いた。ヒソヒソ声のため、カツラが男だとはまた気付かれていない。 カツラが近づくとほのかに女性らしい香りが男の嗅覚を刺激する。その上積極的な言葉に男はゴクリとツバをのみ、黙ってうなづいた。カツラは微笑み掴まれていないほう手を男の胸にそっと置いた。 「そんなに俺に抱かれたい?」 「え?」 男はカツラの声を聞き、金縛りにあったように固まった。 「ははははははっ」 捕まれた手を振り解きカツラは振り返り様に男にウインクをし、立ち去った。 正面にはグッジョブと笑顔で親指をたてているゼファーと眉根を寄せ心配そうな顔をしているタイガがいた。カツラは2人の元に歩みより、そのままタイガに抱きついた。 「ただいま、タイガ」 なんの前触れもなく抱きつかれたタイガは固まってしまった。カツラはそんなタイガにはお構いなしで、タイガの頬にちゅっとキスをした。

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