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第234話 15-59(R18)

裏口から外に出ると薄暗い路地だった。人気はなくカツラはタイガを探す。数歩先にタイガがいた。彼はしゃがみ込み頭を沈めている。完全に自己嫌悪に陥っているようだ。カツラはタイガに歩み寄る。ハイヒールの靴音を聞き、タイガがゆっくりと顔をあげた。 「タイガ」 「いくらここでもずっといたら夜は冷えるだろ?中に戻ろ?」 カツラが腰をかがめ、そっとタイガの肩に手を置いた。 「俺…ほんとだめだな。感情がコントロールできなくて」 真っ直ぐ前を見たまま話すタイガにカツラは不安になった。自分を責めすぎこの関係に疲れてしまうのではないかと。 「それはいいって話し合っただろ?俺は気にしていないし嫌じゃない。場所が場所だったから…」 「ごめん」 カツラは自分がどれほどタイガに夢中なのか、タイガにどうすれば伝わるのか途方に暮れた。まだ時間は早い。みなダンスに興じているのだろう。幸いここに人はいない。 「カツラッ!」 カツラは自分の足をタイガの目の前によく見えるよう膝を曲げた状態でさらした。骨格に沿ってついた筋肉は美しく足首は細く引き締まっている。ふくらはぎは細長く膝から上は目を惹きつけるバランスで太さがあり、タイガはしばし目を奪われた。 「好きにしていいから」 タイガが無言で見上げると美しい女があとわずかで下着が見えそう体勢で腰をかがめ、足をさらけだしていた。女装をした今の姿は女性にしか見えないが、彼はれっきとした男だ。タイガはそっとカツラのふくらはぎに手を触れた。 「機嫌なおせよ?タイガ」 タイガはカツラの膝上に唇を沿わせた。タイガの唇とカツラの肌には薄いベールの隔たりがある。タイガはカツラを壁にもたれさせ、両太ももの裏側に手を這わせながら愛撫を続けた。 「はぁ...」 タイガの大きな手に触れられ、カツラは欲情した。タイガの唇はゆっくりとキスをしながら上へ上へと上がっていく。その動きに合わせて両手も上がり、スカートの裾の中へと忍ばせた。手はすぐに足と尻の境目に行き着く。やはりカツラはTバックだった。タイガはストッキングの上から弾力のある豊満な尻を鷲掴みにする。 「カツラ。ストッキング履いてるのか?」 今更ながらにタイガが尋ねた。 「このほうが女らしく見えるってヘザーがうるさくて」 愛撫に感じていたカツラは、やや頬を染めタイガを見つめながら答えた。 「脱がしていい?」 タイガは瞳の色を濃くして尋ねた。カツラは黙って頷く。 尻の丸みを確認した手はウエストラインにあるストッキングを掴み取り、ゆっくりと下へと下ろしていく。少し下ろしては生肌に吸い付いたり、手で撫でたり揉んだりして味わう。カツラの股間は僅かに反応し、蕾はひくつき始めた。 「あぁぁ…タイガ…」 カツラの手はタイガにこの愛撫を続けるようにタイガの腕に添えられていた。タイガはストッキングをゆっくりと下におろし、サンダルを片方ずつ脱がして、ストッキングも脱がした。タイガは脱がしたストッキングを丸め自分のパンツのポケットにしまう。ようやくタイガは立ち上がり、壁に両手を付き、カツラを見つめた。 長身のタイガに見下ろされ、カツラはわずかに息を切らしてタイガを見上げた。タイガと目が合うとカツラの心臓が早鐘のように鼓動を早くした。カツラはタイガの色を濃くした瞳に囚われる。いつもは穏やかで優しげな瞳がこの時ばかりはとてもエロティックな眼差しになる。カツラの心を一目で奪った男らしい精悍な顔に見つめられ、カツラは金縛りにあったようになった。 生物学上自分もオスだが、目の前にいる男のほうがあらゆる面でオスとして凌駕している。このオスには敵わない。こいつにならなにをされてもいい。カツラはタイガの全てにひれ伏していた。タイガの思うままに自分を欲してほしいし、それに対してはいつでも素直に応えるつもりだ。 カツラはタイガがほしくて仕方がないのだから。この男は自分だけのもの。誰にも渡さない。生物学上(つがい)となるべく女性にさえ彼を渡さない。そんなカツラの独占欲を知ってか知らずか、タイガはカツラが求めるように行動する。 顔を近づけそのまま唇を奪う。タイガの舌がカツラの口腔内深くに入ってくる。唇も吸われ、クチュクチュと濃厚なキスの音が響く。 カツラは恍惚な気分でタイガとの口付けに夢中で応えた。舌をタイガの舌にしつように絡ませ、唾液も吸い尽くす。腕はすでにタイガにまわされていた。 タイガの腕はカツラのスカートの中の尻をつかみとり、ゆっくりと味わうように揉みしだいていた。タイガもカツラも足を絡めて股間同士を擦り合わせる。二人の分身は今やいつ始めてもいいぐらい反応していた。 「んんっ…、ああぁ…。タイガッ…、好きだ、好きだ!お前がほしい」 たまらずカツラがタイガに求めた。二人は唇を離し額をくっつける。 「カツラッ…今はだめだ。一回じゃ満足できない」 タイガの言葉にカツラは瞳を大きく見開いた。激しく強く求められ、心の底から幸せな気持ちが込み上げる。 「タイガ!」 カツラはタイガに抱きついた。しばらくお互い、強く抱きしめ合う。 すると店のほうから一際大きな音量が響き渡る。二人は甘い世界から現実に戻る。顔を見合わせ、優しく微笑みあう。 「きっとフィーバータイムなんだろう。俺たちも戻るか?」 「うん」 二人は熱が冷めるまで軽く深呼吸をする。ようやく冷静になったタイガはカツラと手を繋ぎ共に店内へと戻った。

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