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第242話 15-67
ソロが帰宅したのは昼前だった。自宅に入るとカツラがキッチンで料理に勤しんでいる。香からするとビーフシチューのようだ。部屋の様子が少し変わったように思い目を凝らして見てみると、リビングの内装が変わっていた。
「おかえり」
カツラがソロに気付き声をかけた。
「出してきたのか?」
ソロがソファにかかっているカバーを手にとり言った。いまソファにかけられているカバーはソロの妻、アフェランドラがお気に入りのカバーで彼女の部屋にしまわれていたものだ。
「うん。結構汚れていたからね」
確かに汚れてはいたが今すぐ取り替える必要があったわけではない。昨夜タイガとカツラが激しく愛し合ったため、取り替える必要があったのだ。カツラたちはソロの目をごまかすためにソファだけでなく、他の部分も掃除をし整えていた。カツラが今いるキッチンも作業がしやすいよう整理され、すっきりとした状態にしていた。
「だいぶゆっくりしてきたんだな?朝食も用意していたのに」
「久々だったからな。タイガはどうした?」
「二度寝してるよ。昨日はそこそこ飲んでいたし」
カツラは鼻歌を歌いながらテキパキと料理をこなしていく。孫のこんな姿を目にしたことのなかったソロは内心驚いていた。タイガがカツラを変えた。ソロの目にも人間味が増したカツラはより魅力的に見えた。
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「またゼファーの家に行くのか?」
遅い昼食をとりながら、明日の予定をソロに伝えていた。ここですごすのも今日を入れて3日。3日後の朝にはここを発ち、夕方には自宅に着いている。最終日の明日はまたゼファーの家にお邪魔することになっていた。
「ここに残っている友人ってあいつぐらいしかいないし」
「ゼファーもお前がいて楽しいんだろう。地元とはいえほとんどの者は出て行ったからな」
「リリーもタイガにもう一度会いたいみたいだ。用事があるらしいから、済み次第すぐ帰ってくるってさ」
カツラはタイガに視線を向けながら話した。
「またタルトを作るんだろうな。ゼファー一人じゃ作り甲斐がないとかぼやいていたから」
ソロはふふと微笑みながらそう言って食後のコーヒーを口に運んだ。
昼食後はそれぞれがゆっくりとすごした。
ソロはアトリエで、タイガとカツラは2階で少しずつ荷造りに取り掛かった。
「なんだか、あっという間だったな」
タイガが手を止めしみじみという。ここに初めて来た日を思い出しているようだ。
「そうだな。特に予定を入れてなかったから、ダラダラとして終わるのかと思っていたけど」
タイガはここに来て本当によかったと思っていた。カツラの過去を知れた。女装姿を見られた。そして昨夜は新しいカツラも...。昨夜激しく愛し合い、カツラが潮吹きしたことを思い出し、また下半身の自分がムクムクと起き上がり始めた。カツラは初めてだと言っていた。あの時…。今まで見たことのないカツラの表情にたまらない愛しさが込み上げた。タイガは思っていた。「あの顔をもう一度見たい」と。
「どうした?」
タイガはカツラに声をかけられるまで、カツラの顔を見つめていたのだ。
「あ、うん。別に…。ははは…」
肝心なところで鈍いカツラはタイガが今し方まで想像していたことに全く気づいておらず、再び荷物の整理に取り掛かった。
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