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第244話 15-69

カツラがタイガにそれぞれを紹介する。まず女性から。 長いダークブロンドにヘーゼルの瞳をしたスラっとした美しい女性。彼女はシラー。ブラウンのボブ、明るい青い瞳、小柄でぽっちゃりしたダリアは一児の母だ。ダークブラウンのショートカットにグレーの瞳。長身で中性的なクールな雰囲気を持つベロニカ。肩にかかるぐらいの明るいブロンドのストレートヘア、眼鏡の奥に大きなブラウンの瞳のデージー。 次は男性。 かなりガタイのいいニゲラ。プロレスラーなのかと思うほどの体格だ。短い金髪、青い目は穏やかだ。隣りにいる男性にしては少し小柄なフェンネル。体格とは裏腹に切れ者のような鋭い青い瞳、きちっとセットされたライトブラウンの髪。 カツラの紹介が終わると各々がはじめましてとタイガに笑顔で挨拶する。 「で?その彼がカツラのお相手なの?」 おしゃべり好きそうなダリアが先手をきって尋ねた。一同息を飲みカツラの言葉を待つ。 「うん。タイガだ。俺のパートナー。みんなはゼファーが?」 カツラがゼファーに顔を向け確認した。 「まぁな…」 ゼファーは少し恥ずかしそうだ。カツラの表情は友人たちとの数年ぶりの再会で華やかになった。 「ゼファーが日にち間違うから。本当はもっと来る予定だったんだよ?」 ゼファーの努力を台無しにするような一言をダリアが発した。 「それはソロさんが…」 ソロはゼファーにカツラが帰省する日を誤って一週間遅く伝えていた。カツラを喜ばせようと練られたゼファーの計画は当初の予定と異なり残念なものになってしまった。 「地元を離れている子たちは急な変更に都合がつけられなくて。それで地元にいる私達だけになったってわけ」 ゼファーの事情も察しているのだろうが、ダリアは肩をすくめながら話した。 「そうか。それは仕方ないな。ソロが悪い。ゼファー、ありがとう」 カツラが再びゼファーに顔を向け礼を述べた。日にちの勘違いはソロにはよくあることなのだ。数人でもこの場にいるメンバーはカツラが特に親しくしていた者たちだ。日程調節も無理してくれたのだろう。カツラはみんなの気持ちが嬉しかった。 「立ち話もなんだし、食事しながら話しましょ?」 シラーが促しぞろぞろとダイニングに移動する。広い大理石のダイニングテーブルには食欲をそそる料理が用意されていた。 「このあたりでは美味しいって評判のケイタリングを頼んだの。お酒は持ち寄りだけどね」 「ダリアのオススメだから間違いないと思うわよ?君はこっち。デカいわね。身長いくつ?」 シラーがタイガの腕を取り、席に誘導する。 「あ…、と…191です」 女性たちのオーラに当てられタイガはしどろもどろに答えた。 「大きいはずだ!敬語なんて使わなくていいわよ?カツラのパートナーなんだから」 「おいっ。タイガはこっちだろ」 カツラからタイガを引き離すシラーにカツラがつっこんだ。シラーはもともとその美貌とは裏腹にとてもサバサバした性格で男女ともにウケがいい。タイガと気さくに話すシラーにカツラはイラついた。 「何言ってるの。こんなイケメンとは滅多に話せないんだから。独り占めしないの。カツラらしくないわよ?」 ダリアももう片方のタイガの腕を取り、シラーを援護する。女には敵わないとフェンネルがカツラの肩に手をかける。 「俺たちじゃ役不足だからな。カツラ、男同士で飲もうぜ?」 「そうそう。タイガだったけ?彼のことは任せて。デージー、とりあえずみんなにワイン注いでくれる?」 ベロニカまで口をそろえる。 「了解。タイガ、お酒飲めるの?」 デージーは最初にタイガのグラスにワインを注ぎ始める。タイガが緊張しないよう話しかけながら。女性陣の勢いはすさまじく、カツラ以外の男共はカツラに協力する気はないようで皿に料理をとりわけ始めた。 「そんな顔すんなって。あいつなら心配ないだろ?」 ゼファーが不満タラタラのカツラをなだめた。そうかもしれないけど…俺が嫌なんだよっとカツラは心の中で思い切り悪態をついた。タイガは女性陣に囲まれながらも紳士的な対応をしている。カツラから見てもタイガは女ウケする外見だ。顔なんてストライクゾーンの女性は多いだろう。しかし、カツラの心配をよそにタイガが余計な気を使わないようにダリアたちはタイガとフランクに呼び、会話を楽しみだした。カツラはため息をつき渋々タイガから視線を離した。

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