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第258話 15-83

「遅くなっちゃったな」 2人はあれから別々にシャワーを浴び、再び揃ってベッドに入った。 ここに来た当初、ソロの部屋の向かいのバスルームを使うことにタイガは躊躇いがあった。しかし、カツラの「ソロはそんなこと気にしない」の一言に押され、行為後仕方なく恐る恐るバスルームを使用していたタイガであった。 ここで過ごした数日間、実際、カツラの言葉通りソロと遭遇することもなく、翌日バスルームの使用についてソロから問われることもなかった。そんなわけで今では行為後堂々と汗と愛液を流しにバスルームを利用していた。ソロの家はタイガにとって居心地の良い場所だった。 「明日飛行機でも眠れるだろ。やっぱりアレの後は熱いシャワーを浴びないと」 身も心も満たされカツラはご機嫌のようだ。シャワーよりもアレ自体に時間がかかったんだけどなとタイガは思いながら背伸びをした。心地よい気だるさだ。 カツラも同じようでタイガの方に体を向けタイガの手を取り瞼を閉じた。タイガはカツラを見つめた。ふと今夜のことを思い出し、思案した挙句、今更だが気になっていたことを尋ねる。 「あのさ…」 「ん?」 瞼を閉じたままカツラが返事をした。 「シラーとはキスしたのか?」 タイガの言葉にカツラがパチっと目をあけた。ベッドサイドの薄明かりの中、カツラはタイガを真っ直ぐ見た。 「なにか聞いたのか?」 「いや…別に」 「していない。するはずないだろ。付き合ったのはほんの数時間なんだから」 「いいと思ったから付き合ったんだよな?」 「そうそう。いいと思ったけどすぐに合わないと思った。まだ他にあるのか?」 再び瞼を閉じながらカツラは面倒くさそうに言い放った。 「カツラ…俺も面倒くさいだろ?」 タイガの言葉にカツラがガバっと体を起こした。 「違うっ。今のは…。眠かっただけだ。知りたいのなら教えてやる。ただ、眠かっただけで…」 「カツラ、ごめん。俺は多分シラーよりひどい。だから気になって」 「あいつらに何を言われたか知らないけど、無視しろ。タイガだけは違うんだから。ほら、しっかり抱きしめてくれ」 カツラはタイガにぎゅっと抱きついてきた。 「不安になるようなこと言うな。俺をこんな気持ちにさせるのはタイガだけだ」 「カツラ」 タイガもカツラを強く抱きしめた。 「明日の飛行機の中でお前が気になること全部聞かせてやるよ」 「飛行機の中では寝るんだろ?」 「俺には何よりもお前が大切なんだ」 カツラはタイガに唇を押しつけ、舌を絡めた。 「カツラ」 タイガはカツラを抱きしめた。そして背中を優しくさする。数分するとカツラの寝息が聞こえてきた。今日は疲れているはずだ。タイガも瞼を閉じ眠りについた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 翌日目を覚ますと隣にタイガの姿はなかった。カツラはベッドから飛び起き、そのまま階下へと向かった。カツラの慌ただしい様子にソロが声をかける。 「どうした?悪い夢でも見たのか?」 カツラはキョロキョロとすぐにタイガの姿を探した。しかしタイガの姿は見当たらない。 「タイガは?」 「外だ。車に荷物積んでるぞ」 ソロがいい終わる前にカツラは玄関に向かっていた。外に出るとタイガがレンタカーのトランクに荷物を乗せている。カツラはタイガの姿を見るや否やタイガに背後から抱きついた。 「カツラ?おはよう。もう少し寝ていたらよかったのに」 「起こしてくれたらよかったのに」 お前が昨日あんな話するから不安なんだとカツラはタイガを見つめた。 「カツラ、疲れていただろ?」 タイガがトランクを締め、カツラに振り返った。タイガの瞳は心地よい春の澄んだ空のように優しい色をしていた。 「タイガ...」 「なに?」 「距離置かないで。俺のこと、思い切り束縛していいから。俺はお前だけのものでいたい」 カツラはタイガに唇を重ねた。ここが外であることも忘れ濃厚なキスをする。 「愛してる…タイガ」 まだまだ物足りないとキスを続けていると、ドアをノックする音がした。タイガがはっとし顔をあげると、ソロが玄関のドアごしにいた。 「取り込み中悪いんだがな。コーヒーが冷めてしまうから」 ソロはそれだけ伝えて家の中に戻った。 唇が離れたカツラを見ると不安そうな顔でタイガを見ていた。 「カツラ。言ったろ?嫌になったり嫌いになったりしないって。俺たちはもう夫婦なんだし。これからゆっくり聞かせてもらうよ。カツラのいろいろ。2人の時間はあるんだから」 タイガはカツラの手を取り歩き始めた。 「うん。その言葉、忘れるなよ?」

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