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第260話 15-85(R18)

カツラを抱いている間、タイガは思っていた。カツラは人を狂気に落としてしまうほどの魅力がある。彼と恋に落ちてしまえば彼に強く執着せずにはいられなくなるのだ。それゆえに今までカツラは人と深く関わろうとしてこなかったのだろうか。カツラの心の深淵はわからない。タイガは愛するカツラの言葉を信じるしかない。カツラが気にしないと言っているのだから。 息が整うのを待ちカツラを見ると彼もタイガを見つめていた。お互い自然と笑みがこぼれる。 「カツラ…。俺、カツラを信じていないわけじゃないんだ。でも、俺は…、俺は我慢しようとしてもできない。だから…」 真剣な眼差しで押し黙るタイガの言葉の続きをカツラは待っている。タイガはなにがあろうとカツラを生涯愛し続ける自信がある。今伝えようとしている言葉にカツラがひくかもしれないが…。それでも伝えなければ。タイガは恐る恐る囁く。 「覚悟してくれ」 今後自分は我慢しない。感じたままに行動するすると宣言した重い言葉だ。しかしタイガの予想とは裏腹にカツラの顔に笑顔が浮かぶ。まるでパッと花が咲いたような晴れやかな笑顔だ。 自分に対する執着について問題ないと伝えても、嫉妬や束縛がよくないことだとタイガはよく理解している。そのためなにかことが起こる度にタイガは自己嫌悪に陥っていた。 タイガの塞ぎ込む様子を近くで見てきたカツラはここ最近気が気でなかった。いつかタイガが限界を迎えてしまうのではないかと。今耳にしたタイガからの告白にようやくカツラの胸のつかえがとれたのだ。 「大丈夫だってずっと言っているだろ。こんな気持ちは初めてなんだ。タイガが最初で最後。自分のことはわかっているから」 「カツラ…」 再び口付けをする。タイガは向きを変えカツラをベッドに倒し、着ているシャツを上げカツラの素肌にキスをした。薄桃色の乳首に吸い付き、ペロペロと舐める。 「あっ、あっ、…。タイガ…、きもちいい...。ハニー、ダーリン、俺の最愛の人...愛してる」 はぁはぁと息を切らしながら顔を左右に振り、カツラが気持ちを伝える。伸びたサラ髪がシーツに広がりカツラが顔の向きを変える度に妖艶にさらさらと動く。タイガは淫魔に惹きつけられたように我を忘れカツラを貪り続けた。 激しい愛撫で両方の乳首は色を濃くしぷっくりと勃っている。ようやく満足したタイガは最後に左右の乳首にちゅうっと吸い付き甘噛みをしてようやく口を離す。そして親指で乳首に円を描くように優しくなでる。カツラは快感のあまり瞳を潤ませ息を切らしていた。 「もう戻って朝食の準備しないと」 タイガがカツラのシャツをゆっくりと元に戻しながら言う。 カツラは半ば放心状態であったが与えられる刺激に下半身ではタイガを何度も締め付けていた。当然のことながら、この一連の行動でもう一人のタイガはすっかり固さを取り戻していた。今すぐもう一度愛し合えるほどに。しかしすでに時間オーバーである。 「帰ったらお前と一日中こうしていたい。飽きるまで…」 「俺も同じこと考えてた」 タイガはカツラの首元にキスを落とす。 「カツラ…。でも飽きないよ、きっと」 「それもそうだ」 二人はまたキスをし額を寄せ合い微笑んだ。名残り惜しいが体を離しそそくさと服を着た。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ソロさん、朝食できました」 タイガがアトリエにいるソロに朝食の支度ができた旨を知らせる。 二人が二階に上がってから1時間も経たない内に高速で朝食の準備をした。玉子とチーズ、ハムとアボガドの2種類のホットサンド。色とりどりの野菜のサラダにヨーグルトとフルーツの盛り合わせ。グリーンスムージとハーブティーも用意した。 食後のスイーツにとミニドーナツまでカツラは作った。しかもシュガー味とチョコレート味だ。 「朝から豪勢だな」 「有り合わせだけど」 タイガはカツラの料理の腕と手際の良さに改めて感心していた。多少タイガも手伝ったが、あっという間にこれだけのものを作ってしまった。 「じゃ、いただくとするか」 ソロが熱々のホットサンドを頬張る。 「うん!うまい!」 「いただきます」 ソロに続きタイガもホットサンドを口にする。 「美味しい!」 「よかった。多めに作ったからどんどん召し上がれ」 カツラは晴れやかな顔でハーブティーをティーカップに注いでいく。タイガは手を休めそんなカツラに視線を向けた。 「どうした?」 タイガが黙って自分を見つめていることに気づいたカツラが微笑みを浮かべ尋ねた。 「あっ…、いや…。別に…」 タイガは視線を皿に落とし、黙々と食べ始めた。 カツラ…。髪伸びたな。ヤバくないか? タイガはチラチラとカツラを盗み見した。カツラはホットサンドには手をつけず、フルーツを皿に取り、ハーブティーを飲みながらソロと世間話をしている。何気ない朝食の時間だが、カツラの全ては優雅で目を奪われた。 うなじにかかるほど伸びた髪、耳元にもサラ髪がかかり、長い前髪は横に流されカツラの瞳をより一層色っぽく見せていた。いつの間に髪があんなに伸びたのだろう?代謝が上がったのだろうか?タイガは一人考えを巡らせはっとした。 ここに来てから毎晩どころか、1日に何度もカツラを抱いている。そしてカツラはその都度絶頂を迎えているのだ。タイガの脳裏に頬を染め息を切らしながら瞳を潤ませるカツラの艶かしい顔が思い浮かんだ。 「タイガ、どうした?さっきから変だぞ?」 「え!?」 唐突にカツラに声をかけられタイガはパッと顔を上げる。ソロとカツラが自分に注目していた。 「ニヤニヤしたり、難しい顔したり…」 カツラはふふふと笑いながらタイガに伝えた。どうやらあれこれ考えながら気持ちが顔に出てしまっていたらしい。 「いや...。むこうに戻ったらいろいろ大変だなと思って。ははは...」 タイガは今先ほどまで脳裏に浮かんだやましいことを気づかれないようにごまかした。 「ふーん」 そんなタイガの内心をカツラは気付いているのか気付いていないのか、優しく微笑みながらハーブティーに口をつけた。

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