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第273話 18-7
カツラはニレがなぜああも長く抱擁したのかその瞬間理解した。タイガに気付いたのだ。タイガに嫉妬させるためにわざとあんなことをしたのだと。
タイガの瞳は濃く表情は固い。そして彼の隣にいるウィローは見てはいけないものを見てしまったという動揺がひどすぎて、その態度が滑稽だった。しかし、不思議と今までの焦りはカツラの中にはなかった。笑顔を浮かべ、二人に声をかける。
「合流したんだな。よかった。さっきの彼はニレで。研修中に知り合ったワイン農家だ。ここに出店しているらしい」
なにもやましいことはない。カツラは淡々とことの経緯を説明した。
「えーっと...」
押し黙るタイガの代わりにウィローがなにか言おうとするが、この気まずさに言葉が続かない。
「来月結婚するんだってさ。それでお祝いにハグしていたんだ」
「ハグ?ハグって...」
ウィローは何か言いたげだ。恐らく額にキスしたことを聞きたいのだろう。カツラはそんなウィローをスルーしてタイガに話しかける。
「もう終わるから。一緒に帰ろう」
カツラとウィローは一人タイガを店に待たせ更衣室へと向かう。
「カツラさん...。大丈夫なんですか?」
ウィローがおどおどしながら尋ねる。タイガのことを心配しているようだ。
「お前なに心配してんだ?問題ない」
ウィローはこういう状況が苦手らしくさっさと着替えをすませ、逃げるように帰っていった。
帰宅の路、カツラは普通にタイガに話しかけるがタイガは素っ気無い返事をするだけでほぼ無言だった。
家につき、カツラは先にシャワーを浴びた。
汗を流し終えリビングに行くとタイガはソファに座り珍しく酒を飲んでいる。表情は暗い。タイガは目の前のローテーブルにある酒が入ったグラスをぼーっと見ている。カツラに一瞬視線をむけるが再びグラスに戻す。
カツラは今日はいつものスウェットは着ずにバスローブを着ていた。タイガが座るソファーに近づいていく。そしてタイガの目の前でバスローブの紐をゆっくりととき、バスローブも肩からスルリと落とし裸体をさらした。
視線の先にカツラが身につけていたバスローブが落ちタイガはようやく顔を上げる。二人の視線が交わった。カツラは今の状態を楽しんでいるのか口角が僅かに上がっている。タイガはカツラの手を引きそのままソファーに押し倒した。そして自分のパンツと下着をさっと下ろし、有無をいわせぬままいきなりカツラの中に侵入した。
「あっ!!ふっ...」
カツラはわかっていた。タイガがこうするであろうことは。そのため前もって自分の内にはローションをしのばせてあった。しかもタイガとの行為を想像するだけで自然とカツラの内奥はとろけ甘い蜜をしたらせる。そのためタイガが無理矢理侵入した場所はやわらかく、タイガを簡単に迎え入れた。
「カツラ?」
もっときついと思っていたカツラの内側は優しくタイガを飲み込んだ。シャワーを浴びた後なので温かい。そして心地よいカツラの粘膜に包まれタイガは面食らっているようだ。カツラはタイガにキスをした。
「タイガ、好きだ。愛してる。満足するまで抱けよ?」
「言い訳はないのか?」
カツラは片眉をあげた。ニレとのことを気にしているのだ。毎回毎回飽きずにこいつは…。今夜ようやくまともに口をきいた。自分の気持ちをほんとうに理解していないと半ば呆れながらもカツラはタイガの執着に満足する。
「あるはずないだろ。彼といたのはほんの数分なんだから」
「数分?」
数分であれだけ親しくなるのか?まるで旧友に再会したような雰囲気だった。タイガはなおさら心配になった。
「タイガ。お前と別れてつらい時に話をしたんだ。それだけだ」
カツラはタイガの髪を撫でながら言った。一糸まとわずタイガを中に含み生まれたままの姿で下から見上げるカツラは美しい。
色白の肌がツヤツヤと煌めき、素肌同士が触れ合っているところは吸い付くようで心地よい。絹のように繊細で艶のある黒髪に映える宝石のような翠の瞳。それがある顔立ちも一度見れば改めて二度見してしまうほど人目をひく顔立ちだ。清廉な女神と見紛うほどなのに、口からでる声色は低音である。幽玄な印象を与える彼の存在に心揺すぶられずそそられない者などいるのだろうか。
タイガは心底後悔した。一時でもカツラを手放したことを。研修中での詳細は聞いていない。カツラはタイガと離れている間、きわどいことはあったが一線は超えていないと言っていた。際どいとはどこまでなのか。いったい誰と。これ程魅力的なのだから周りが放っておくはずがないのだ。あの時の自分は本当に浅はかだった。
「カツラ、本当にごめん」
タイガはカツラをぎゅっと抱きしめた。
「タイガ?どうして謝るんだ?」
「カツラにつらい思いをさせたから。自分が許せない」
「バカだな。だったら俺がタイガを許す。罰として一生俺に尽くすんだ。絶対に離れるなよ?」
カツラの言葉にタイガは顔を上げカツラを見つめた。カツラは優しく微笑んでいる。そのままタイガのワイシャツに手をかける。
「ほら、もうとっくにいい具合だろ?早く動けよ?」
タイガにキスをし、服を脱がしながら行為をねだるカツラにタイガは素直に従う。この男には抗えない。こんなふうに甘えられた上にカツラの中はきゅうっとタイガ自身を何度も締め付け続けているのだ。
「カツラ、カツラ…」
心のままにタイガは腰を動かし始めた。ピチャピチャと性欲を煽る音がする。素っ裸になった二人はお互い求め合い混ざり合うように激しく奪い合った。
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