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第291話 番外編 白いルピナス
こういったゲームと今まで関わりを持ってこなかったタイガはボリジィの言ったことが信じられなかった。
「まさか…」
今の映像技術がすごいとはいえそんなことはありえない。ゲーム内でのセックスにはまるなんて。きっとごくごく一部の人間にあてはまることなのだ。そう結論づけたタイガの目の前に携帯画面が押しつけられた。
「!!」
それはルピナスが女装姿で勇者とやりとりをしているシーンの画像だった。
同性異性問わず人を魅了する設定の人物として描かれたルピナスはとても美しい男だ。写真のように鮮明な映像で生身の人間と大差ない。やはり顔立ちは中性的なせいかカツラに似ている。
画像をスクロールするとルピナスと向かい合う燃えるような赤髪の勇者のズーム姿。画像の右側は手前のルピナスの後ろ姿がはっきりと映っている。露を含んだような長髪から垣間見える白い背中の中心線には背骨のラインが美しく走り、少し盛り上がったシースルーの薄い布からはくっきりと尻のフォルムが見えていた。黄金律を描く臀部のカーブは足との境目が際立っていて目をひく。はっきりとした割れ目の線まで美しい。その割れ目の上には食い込んだ細い紐がうっすらと見え、性欲を駆り立てた。豊満でつい触れたくなる尻。男性だがオスを煽るように作られたルピナスの裸体はバランスよく丸みがあり男の股間を刺激するように作られていた。
トリスが横から画像をさらに下にスクロールする。まさに今勇者に抱かれようとしているルピナスの姿があった。
両手を後ろにつき腰をベッドに下ろしたルピナスのシースルーの衣は引きちぎられ紐だけを巻きつけたような下半身はほぼ裸である。そんな状況にはお構いなくルピナスは視線を下に向け足を大きく開脚している。ルピナスの視線の先にいる勇者はルピナスの両足にできた空間に体をいれ恍惚の表情で薄桃色の乳首に吸い付いていた。とても繊細なタッチで描かれた映像。透明の唾液が糸をひき勇者の細く尖らせた舌に触れられたルピナスの乳首はしっかりと勃っていた。今にも唾液を含んだピチャピチャという音とルピナスの官能的な喘ぎ声が聞こえてきそうだ。
「これは…!やばいな。俺もハマりそうだわ」
思わずトリスの本音が出た。男二人は衝撃的な絵にゴクリと生唾をのみこんだ。
「俺はノーマルなんだぞ!男に盛るなんて…。負けた気がする…」
「もうっ、馬鹿なこと言ってないで!」
携帯を見せつけていたボリジィがトリスの言葉にさっと携帯画面を閉じた。気を取り直してタイガにキャラクターの詳細を説明する。
「このキャラクターが面白いのは魅力的な容姿だけでなくて、その設定にもあるの。ほんとうの姿は性欲の神なんかじゃなくて、もっと崇高な存在なのよ。闇堕ちして今の姿になったとかって」
タイガはボリジィが語るこのゲームに大いに興味をそそられた。主にカツラに似たルピナスにだが。
「その辺の謎を解きつつミッションをクリアしていくっていうのかな。勇者は過去の大戦で六感を奪われていて。ゲーム開始時の勇者の姿はかりそめの姿で、自分の六感を取り戻すために奪った敵たちと戦っていく。お助けキャラのニンフや他の欲望の神もたくさん出てくるし、勇者は大変なわけ。もちろん他の欲望の神も個性的よ」
「主人公の性別も選択できるから、それによってこのルピナスの姿もかわるわけだ」
なるほどとトリスが感心の声をあげた。
「女性の勇者の場合はどうなるんだ?」
今やすっかりこのラークスパーテイルズなるゲームに興味を抱いたタイガは質問する。
「物語自体は変わらないわ。ルピナスに関しては男装で登場するはずよ。女性の勇者とは…。わかるでしょ?それが目的でわざわざ女性の勇者を選択してゲームを始める人たちだっているんだから」
「ニンフたちは女だしな。男としては楽しみたいなら勇者は男設定でやったほうが満喫できるってわけか」
トリスの言葉からこのゲームの主人公の勇者は登場するニンフたちとも関係を結ぶらしい。
タイガはそばにあるこのゲームの簡単な説明に目を通す。
ボリジィが言ったように欲望の神はルピナスのような美しいもの、勇ましいもの、卑屈なもの、巨漢なものなど様々な印象を帯びた神々がいるようだ。人型から獣型、姿形にもこだわっている。もちろん女性の欲望の神もいる。ルピナスに負けず劣らず魅惑的だ。
彼らと契約を交わしうまく利用できれば勝利を導くが深みにはまると死をまねく。このゲームに登場する欲望のの神たちはいわば諸刃の剣の存在である。
「噂には聞いていたけど、なかなか面白そうだな。ルピナスもエロいし。俺もやってみようかなぁ」
再びのトリスの発言にジロリとボリジィが睨みつける。
そんなボリジィに一緒にやればいいだろうとトリスがご機嫌をとる。ボリジィは呆れたようにため息をつきタイガに話をもどした。
「気になるなら買っちゃえば?着てくれるんじゃない?」
「そうそう。こういうのはパートナーとしか楽しめないからな」
「うん…」
カツラなら着てくれるかもしれない。タイガの頼みにいままで彼がノーと言ったことはない。きわどい下着までつけてくれた。タイガは二人に促されるまま、ルピナスの衣装を思い切って購入した。もちろん白い衣装である。
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