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第294話 19-3

クラッシックが流れるラウンジに座り、資料に目を通す。今日タイガはベラとレストランのオーナーに向けてのプレゼンの内容について、最終的な打ち合わせを行ったばかりだ。 ベラは今本社に確認の連絡を入れるため席をはずしている。 タイガはこれから会社に戻り、打ち合わせの詳細を社長に話さなければならない。 今日も慌ただしい一日になりそうだ。腕もとの時計を確認し、少し笑みが溢れる。 「タイガ、待った?」 約束の時間どおり、カツラがきた。彼はそのままタイガの隣に腰をかける。 「カツラ、時間通りだ」 今朝別れたばかりだが、こうして会えることがとても嬉しい。美しい自分のパートナーの姿を目にし、タイガは笑みを浮かべ、カツラの手に触れる。 「用事って?例の件なら…」 カツラの意見を参考にしようと訪れたベラの店。しかし、タイガの予想に反してカツラは肯定的な意見は述べなかった。タイガはカツラに全幅の信頼を置いている。そのカツラが太鼓判を押さなかった店を果たしてオーナーに薦めていいものかとタイガは迷っていた。 そんなタイガの会社側の事情を察したのか、ベラからプレゼンについて相談をもちかけられた。 タイガのパートナーであるカツラの意見も聞きたいからとカツラの同席を依頼されたのだ。 「うん。ごめんな、巻き込んでしまって」 「タイガ」 タイガが申し訳なさそうに謝るとカツラは気にするなというふうにタイガの手に自分の手を重ねた。 「ごめんなさい、お待たせしてしまって。あら、こんにちは」 席に戻ってきたベラはカツラに微笑み挨拶をする。今日の彼女はミモレ丈の白のチュールスカートにサーモンピンクのニットだった。髪もおろし先日とは異なり柔らかい女性らしい雰囲気。 カツラはタイガのためにそうしたのではとあらぬ杞憂に囚われた。 「タイガ、申し訳ないのだけどうちのオーナーが直接話したいらしいの。今タイミングよく本部に来ているそうだからこれからむかえないかな?」 「え?これから?」 「彼には意見を聞くだけだから大丈夫よ」 ベラはカツラに同意を求めるように視線をむけた。 「俺のほうは予定はなんとかなるけど…」 タイガはカツラを気遣い決断できずにいる。ベラはお願いという眼差しをなおさらカツラにむけた。 「いいよ、タイガ。問題ない。行って」 カツラはタイガの足手纏いにはなりたくなかったし、いけすかないとはいえベラも今回の件では必死なのだろうと思い了承した。 「わかった。じゃ、いってくるよ。ベラ、その…」 「大丈夫。一般的な意見を聞くだけだから」 タイガはじゃぁと言ってたちあがり急ぎ目的の場所へと向かった。 ベラが席につき早速意見交換かと思ったが、彼女は少し待っていてと言ってどこかへ行ってしまった。 なんなんだ?と思ってしばらく待っているとベラが戻ってきた。となりにもう一人女性を連れて。

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