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第303話 番外編2 トリス、タイガとの再会
ゆるいウェーブがかかった金髪のロングヘア。顔だちは見えないが、なんとなく美人の雰囲気が後ろ姿から感じられた。
二人の口付けは濃厚で長く、ボリジィといるからかトリスは恥ずかしくなってきた。このままキスが終わるのを待っていても仕方がない。トリスが意を決してタイガに声をかけようと思った瞬間、ようやく二人のキスが終わった。微笑みあっているのか相変わらず距離は近いが。
「タイガ!」
トリスから名を呼ばれタイガが振り向いた。同時に隣の女もこちらに顔をむけた。やはり美人だった。しかし、想像以上の美しさにトリスは女に視線が釘付けになってしまった。
女は軽く笑みを浮かべトリスを見ていた。
今まで目にした女でこれほど意識を引き寄せられた女はいなかった。それほどまでにその女は強烈な印象をトリスに与えた。透けるような白い肌に美しい形の翠の瞳。吸い込まれるように視線を女から晒すことができない。
女の服装はトリスたちと同じく、白いVネックトレーナーに黒いズボンといったカジュアルなものだ。首元にはネックレスチェーンが見えた。アクセサリーはそれだけだ。しかしシンプルな装いがかえってより一層女の素の魅力を引き立てていた。
「ちょっと」
同じく衝撃をうけていたが同性であるためか先に我に返ったボリジィが魂を抜かれたように呆けているトリスの横っ腹を肘でこついた。
「あ?あ…。ようっ、タイガ」
その場をとりつくろうようにトリスは手をあげタイガの名を呼んだ。先程とはうってかわってまぬけな挨拶になってしまった。
「トリス、ボリジィ。ハイヤーで?」
タイガが立ち上がりいつもの親しげな笑顔を向けた。となりの女は立ち上がらず、タイガを見上げている。
それにしても横顔まで美しい。女嫌いのタイガがここまでの美女を手に入れるなんて。トリスは今すぐにでもことの経緯を問いただしたかった。
悶々とするトリスをよそにボリジィがタイガに気さくに答えている。ゴージャスな面々を前にしハイヤーは諦め徒歩できたと。
「彼らは二階を貸し切っているんだ。珍しいよ、正装でくるような場所じゃないから」
タイガは紳士らしくボリジィをエスコートし、女の正面の席の椅子をひいた。ボリジィはタイガに礼を述べ着席する。
タイガにエスコートされるボリジィのあとをのろのろと歩いていたトリスはチラリと再び例の女に視線をむけた。女は小悪魔なような笑みを浮かべトリスを見ていた。途端に恥ずかしくなったトリスは視線を慌てて晒し、大人しくボリジィのとなり、タイガの向かいの席についた。
一同改めて顔を合わせる。
「カツラ、俺の友人のトリスと彼女のボリジだ。こちらはカツラ。俺のパートナー」
「初めまして。あなた、とっても美人ね。モデルとか?」
「タイガ、どうなってんだよ?話と違うだろうが」
ボリジィの質問を遮りトリスが捲し立てた。
「ふふふふふっ」
「え?」
カツラの低い笑い声にトリスとボリジィは同時に驚嘆の声をあげた。
「タイガ、もういいだろう?二人に悪い」
トリスとボリジィはカツラと紹介された女の声を聞いて戸惑っていた。
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