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第307話 番外編6 トリス、欲望の神に魅入られる
今夜はトリスの自宅でタイガ、カエデと夕食だ。トリスは恋人のボリジィと半同棲生活である。今日ボリジィは帰りが遅いので自分の家に帰るという。これはいい機会とトリスは再び親交を深めようとタイガを通してカエデにも声をかけた。
「同棲してるいるなんて。もうすぐ入籍か?」
「正確には半同棲な。あいつ、忙しそうだから、」
先にトリスの家に着いたタイガと二人、ダラダラと世間話を交わす。
今夜は各々酒と料理を持ち寄ることになっていた。タイガはカツラおすすめの酒とカツラの手料理を持参していた。あいつは料理も作るのかとカツラが作った料理にトリスは興味をそそられる。
タイガの伴侶のカツラは魅力的な男だった。同性であるにも関わらずトリスはカツラにもう一度会いたいと思っていた。衝撃度ではカエデも負けていないが。トリスは数年ぶりに会うカエデの到着をまだかまだかと待ち侘びていた。
軽い酒をタイガと飲み交わし、先日訪れたレストランの話になった。ボリジィがレストランをかなり気に入り後日、宿泊も兼ねて再度訪れたのだ。
件のレストランはタイガの会社と提携するかもれないので、役にたてばと気づいた点、感想などを伝える。
酒のボトルが一本空く頃インターホンがなった。
「きっとカエデだ」
先程からカエデとメールのやりとりをしていたタイガが待ち侘びたような笑みをこぼした。
トリスはさっと立ち上がり、玄関に向かいドアを開けた。そこにはなつかしいカエデがいた。見事な金髪、太陽のような優しい笑顔、学生時代、みんなの癒しの存在だったカエデだ。
「カエデ!髪型以外はかわってないな!」
カエデは最近長めのウェーブがかった癖毛を短髪にしていた。そのせいで昔より男らしく見えた。童顔は変わりないが少したくましくなったようだ。
「へんかな?」
恥ずかしげに髪をおさえ俯くカエデはやはり可愛らしい存在だ。トリスはよく似合っていると伝え部屋に招いた。
「カエデ。しばらく!」
「タイガ、元気だった?」
三人でこうして会うのは数年ぶりだが、一番繊細な時期を共にすごした仲間である。すぐに話はもりあがり時間はあっという間に過ぎてしまった。
「これかはらちょくちょく会おうぜ?近くにいるんだから」
トリスがタイガとカエデに提案した。おそらく二人もそう思っているに違いない。今夜は本当に楽しい夜だ。
「そうだね。僕も最近は遠方の出張はないし」
カエデの言葉にタイガが微笑みながら頷いている。次回の集まりが確定した。
「今日の再会をいわって写真でも撮るか!」
トリスがそう言って携帯を操作し始めるとタイガとカエデも携帯をカメラモードにする。
「おいおい、誰が撮るんだよ?」
「ほんとだ」
「俺のは自動撮影機能があるから」
「そうか、じゃタイガのカメラで撮影するか」
タイガは自分の携帯を自動撮影モードに切り替え、携帯を指定の場所におく。
正面からの笑顔で始まりふざけたポーズなど数枚撮り終わりタイガが間違いなく撮れているか確認する。
タイガはトリスとカエデに写真を送り、問題ないか確認してもらう。
「タイガ、これでいいのかな?」
携帯を新機種に交換したばかりのカエデがタイガに操作方法を尋ねる。タイガはカエデの隣にいき、写真の保存方法だけでなく、丁寧に他の操作方法も説明しはじめた。
カシャッ
いい加減においておいたタイガのカメラがオートタイマーでカエデとタイガのツーショットを撮影した。
「なんだよ、タイガ。携帯ちゃんとしまっておけよ?」
トリスは言いながらタイガの携帯を手にした。画面を確認すると今しがた撮影されたカエデとタイガのツーショットがあった。なかなか上手く撮れている。やはりこの二人は似たもの同士だと写真を見て改めて思う。
「これ、カエデに送るぜ?」
「あ、うん」
携帯操作に勤しむカエデは返事もそこそこだ。タイガもよろしくと言ってカエデとの会話に戻る。世話のかかる二人だと思いトリスはタイガの携帯から写真フォルダをひらく。
わざとではなく手が画面にあたってしまった。その瞬間、フォルダの写真が大きくスクロールされる。数日前のレストランの写真があった。トリスとボリジィ、タイガとカツラ、4人の写真。トリスはしばし写真ごしのカツラに意識をむけさっと視線を動かした。その瞬間ドクンと心拍があがる。画面ギリギリにトリスの視線を強烈に引き寄せる写真があったからだ。よく見るとそれは白いルピナスの写真だ。
窓際に立つルピナス。しかし後ろ姿で顔は見えない。腰に巻かれたシースルーの布からは見事な裸体がすけて見えている。とても魅惑的なボディだ。
トリスは導かれるように視線を動かす。同じく窓辺に立つルピナス。透き通るような白い肌に紅い唇が映える繊細な美。あまりの美しさに心を奪われる。そのルピナスがこちらに背を向け前で肩肘を掴み振り向いている。腰にシースルーの布は巻いておらず白い桃のようなたわわな尻は丸見えだった。足の付け根と尻の境目は美しく、キュッと上がった二つの膨らみはエロティックで、そこに顔を埋め頬擦りしたくなった。割れ目に食い込ませただけの白い紐は華奢なウエストチェーンベルトと腰にあり、妖艶さを際立たせていた。その細くくびれたウエストの上、背中のラインも目を見張るほど美しい。しかしそこでトリスはふと違和感を覚えた。ルピナスはたしか長髪だったはず。
トリスは改めてルピナスの顔を見る。写真の人物はルピナスに似ているがルピナスではない。吸い込まれるような翠の瞳。それは少し濡れた黒い艶髪をオールバックに上げたカツラであった。
これはタイガがパートナーのカツラにコスプレを着せ、記念にと写真を撮ったものだ。
トリスは見てはいけないものを見てしまった罪悪感と同性でありながら強烈な存在感を放つカツラの秘密を見たいという欲求に苛まれた。結果、トリスはルピナスの魔力にかかったようにいとも簡単に欲望に負け画像をスクロールする。
ルピナスの姿をしたカツラがベットにうつ伏せ、上半身だけ少し起こしこちらを見ていた。こちらに半分体をむけているせいで、薄桃色の乳首もみえた。腰巻きはしていない。まっすぐと伸びた色白の足。男の足と思えないほど筋肉はなめらかでバランスがいい。そして華奢な体つきのわりに尻の肉付きはよかった。素っ裸と言っても差し支えない。美しい裸体を惜しげもなくさらしているカツラに心を乱される。
「あいつ、こんな体しているのか」トリスはほぼ裸のカツラを押し倒し、舌を絡め口付けをし尻の割れ目を思い切り左右に開きその真ん中を覗き侵入したい衝動にかられた。
瞬間トリスの下半身がガチガチに反応した。トリスは自分が新たな扉を開けてしまいそうで本能的にヤバいと感じフォルダを消し携帯をさっと閉じた。
「わりぃ、携帯消えちまった」
「ああ、そう?あとで送るよ」
ほんの数秒のことだがトリスの心はおおいに乱されていた。
トリスは何気ないふうを装いタイガに携帯を手渡す。タイガは全くなにも気づいていないようだ。あんな写真を撮ったのだ。その後二人が何をしたか容易に想像できた。なぜか胸がモヤモヤする。この上なく美しい男を手に入れたタイガを羨ましいと思っているのか。パートナーなのだから当然のことだが、カツラはタイガに全て許している。その事実が胸に突き刺さり虚しい気持ちになった。トリスは落ち着かないままその後上の空で時間をすごした。
あれから数日がたった。最近トリスは暇をみつけてはゲームに没頭していた。
「やだ、またやってるの?ラークスパーテイルズ」
急に思い立ったようにラークスパーテイルズを購入し、毎日長時間テレビから離れないトリスに呆れた様子でボリジィが言った。
「ま、おもしろいからな」
「それにしてはげっそりじゃない」
ボリジィは仕事が忙しく、数日トリスの家に帰宅していなかった。
トリスはここしばらくルピナスが登場するラークスパーテイルズに夢中だが、ただ暇をもてあましているのだろうとボリジィは特に気にかけていなかった。
「ほどほどにね」
ボリジィはそう言ってまたいそいそと仕事に出かけていった。
トリスはといえば、ルピナスに扮したカツラを見てからというものおかしな欲求不満にとりつかれていた。これを払拭するには唯一の方法、あれしかない。「ルピナス、おまえを犯しまくってやるっ!」そう、決意を胸にトリスは勇者ラークスパーとなりゲームの世界でカツラに似たルピナスとのセックスにのめりこんでいた。時には騎乗位で、森の中でバックから、自分の部屋ではあらゆる体位で一晩かけルピナスを抱いた。おかげでラークスパーはエナジーを吸い取られ餓死寸前の見るに耐えない姿となっていた。
「くそっー!!もう一度トライだ!」
トリスがこのゲームに飽きるのにはまだしばらく時間が必要だった。
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