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第317話 19-20

「カツラ、おつかれ。早く仕事がおわったから」 カツラの姿を認めた瞬間、笑みを浮かべたタイガであったが、背後にいるケリアに気付くと言葉が消えた。 「やぁ、タイガくん」 「ケリアさん…こんばんは。どうしてここに?」 「店長と打ち合わせがあってね。いまかえるところなんだ。ちょうど時間が同じだったから、彼にタクシー乗り場まで案内をしてもらうことになって」 「そう…ですか」 「タイガ」 不安を押し殺した声でカツラがタイガを呼んだ。カツラのケリアに対する気持ちを知っているタイガはカツラを安心させるように笑みを浮かべた。 「だったら一緒にいこう。さぁ」 タイガはそう言ってカツラに手を差し出した。手を繋ごうと言っているのだ。もちろんカツラは笑みを浮かべタイガの手をとる。 「うん」 タイガは夫なのだ。なにを遠慮することがある?カツラは堂々とタイガに並びスタッフたちにお疲れ様と声をかけ店をでた。 タクシー乗り場までの道のり、タイガを真ん中に歩いて行く。ケリアはもっぱらタイガに話しかけた。もちろん店の話だ。店長には今後の店の運営、酒選びなどのアドバイスをもらっていたと説明した。 なんの問題もなくケリアはおやすみと言ってタクシーに乗り込んだ。 「あの人、どういうつもりなんだ?」 「さぁ?店に来たときは驚いたけど」 「なにかされなかった?」 ケリアと別れて二人での家路、タイガが今夜の出来事を確認する。カツラは迷った。なにかあったといえば未だに馴れ馴れしく肩をくまれたぐらいだ。ケリアの視線に関してはカツラの思い違いかもしれない。タイガに余計な心配はかけたくなかった。 「特には。俺はずっと店にいたから。あいつは店長と話していたし」 「今日、行ってよかったよ」 カツラもタイガもこの一件からケリアのことは要注意人物として心の片隅にとめおいていた。しかし二人の心配は杞憂だったように何ごともなく数日がすぎていった。 久しぶりに休日が重なったカツラとタイガはタイガが候補から落としてしまったレストランのオーナーの推薦する店に来ていた。 ランチタイムにテラスにあしらわれた半個室でまったりとすごす。ガーデニングにこだわった店の周りには彩りの花々が咲き乱れ自然の美しい香がほのかにただよっていた。 コース料理を食べ終わる頃にはカツラはタイガの隣の席に移動し、ピタッとタイガにくっつき指を絡めて手をつなぎ、唇が触れるほどの距離で話していた。 「ここはなかなかいいな。今日みたいな天気のいい日は最高だ」 「前にきたときはここまでいいとはわからなかった。カツラといるからかな」 「ふふふ…。そうかもな」 お互い近い距離で微笑みあい額同士をくっつける。そのまま阿吽の呼吸でどちらともなくキスをした。軽く唇が触れるキスから始まり、唇を吸い合う。つぎには舌を絡めあいちゅっちゅっと湿り気のある艶めかしい音をたてた。 「最高のデザートだ」 タイガは言いながらカツラの顎を掴み首筋にもキスをする。 「こらぁ、くすぐったい」 そうやってまた見つめあい、額を合わせる。カツラはタイガの耳たぶを甘噛みし、首筋につないでいないほうの手をまわした。 「帰ったらどうする?」 何を望んでいるのかわかるような甘えた声と視線をタイガに向けカツラが尋ねた。 「うーん…。部屋が散らかっているから…」 タイガはわざと気づかないふりをしてそっぽを向いてつぶやいた。 「あ?なんだと?」 カツラもタイガが本心とは反対のことをわざと言っているのだとわかっていてタイガの鼻先を軽くつまんだ。 「冗談だよっ。カツラをいただこうかな」 タイガは自分の鼻先をつまんだカツラの手をとり、ちゅっちゅっとキスをした。瞳の色を濃くした視線はカツラにむけて。 「タイガ…」 こうなってしまってはカツラはタイガに抱かれたくてたまらなくなってしまう。自分からタイガに顔を近づけてまたキスをした。今度は初めから濃厚なキスだ。 二人で思うままにいちゃついたタイガはこのままではこの店で行為に及んでしまいかねないと、気分を変えるために水を一杯飲みレストルームにむかった。そこで思わぬ人物に出会う。 「あれ?タイガくん!」 「ケリア…さん」

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