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第323話 19-26
タイガからは詳細は家で話すからとカツラはあらましだけさらっと説明された。
日頃から何かとトラブルに巻き込まれるカツラの身を案じて、タイガは数日前からカツラの携帯にGPSを仕込んでいたのだ。そのため今回カツラの居場所を突き止めることができた。
そして何故カツラの危機に気づいたかというと、アリッサとの出会いがあったからだ。ケリアははなからカツラを誘き出すためにわざと書類を忘れカツラに届けさせたと推測できた。
「でも…どうやって?それに彼は誰なんだ?」
「それは」
タイガが話そうとしたところでケリアの動きが止まった。どうやらまた射精したようだ。タイガはカツラの手をとり急ぎ足で移動し始めた。
カツラは今黒いバンの中にいる。タイガに連れられここで待つよう言われたのだ。車中で待つカツラは時間の感覚が麻痺していた。なにも考えられず、ただ外の景色を眺めていた。
どれほど時間が経ったのだろうか、ふいに後部座席に見知らぬ男がのりこんできた。男は警戒心むき出しのカツラのことなど気にせず「どうもー」と軽い調子で挨拶をし、カツラの隣にくつろぐように座った。
石鹸の香を漂わせた男は携帯を取り出しゲームを始めた。男の態度に唖然としながらもカツラは隣に座る男をチラチラ見ているとあることに気づいた。この男は先程ケリアとセックスをしていた男ではないかと。
まだタイガから詳細を聞いていないカツラの頭の中は?マークだらけだった。
「お待たせ。いこうか?」
数分するとタイガが戻ってきた。普段と変わらぬ様子で運転席に乗り込む。
「じゃ、お店までお願いしまーす」
「わかった」
タイガは車を出し、繁華街のほうへと車を走らせた。曰く付きの店が多い場所だ。静かな通りに車を停めると男は車から降りた。
「今日はありがとう。のこりも明日中には振り込むから」
「またなにかあったら声かけて。毎度ありぃ」
窓越しにタイガと話していた男は軽い調子でそのまま去って行った。
「タイガ、さっきの男は?」
タイガはカツラの体調を気遣い、店に連絡し休む旨を伝えていた。自宅に着くなりカツラがタイガにあの男のことを尋ねたが、その時玄関のドアベルが鳴った。
「カツラ、ソファで待っていて」
媚薬を大量に仕込まれたカツラはまだ本調子ではなかった。僅かに目は潤み、体の疼きのため行動が遅い。タイガに言われるま素直にノロノロとソファに腰を下ろす。
「今ちょうどついたところなんだ。診てもらえるかな?」
タイガの話し声が聞こえる。誰かいるのかとカツラが振り向くとまたも見知らぬ男がタイガの背後から歩いてきた。
黒縁メガネに人を落ち着かせる優しい眼差し。知的さも垣間見えるダークブルーの目。後ろに結われた長めの茶髪が人懐っこさを抱かせた。得体の知れない不思議なオーラを纏ったこの男は何者なのか。似たような雰囲気を持った者とどこかで出会った記憶があったが思い出せない。
訝しむカツラの表情をみてとり男が穏やかな声で話しかけた。
「こんにちは。警戒しないで。僕は医者なんだ」
「医者?」
「大変な目にあったね。少し診察していいかな?」
カツラがタイガを見るとタイガは大丈夫だとうなづいてみせた。カツラは問題ないと言いたかったが、タイガが望むので仕方がない。
ファーンと紹介された医者はカツラに余計なプレッシャーをかけないためかさっと診察を終えた。タイガはファーンを見送るためカツラを待たせ玄関へと向かった。
「睡眠薬はぬけたようだ。でも水分はこまめにとってね」
「うん、ありがとう」
「睡眠薬のほうは大丈夫だろうけど、もう一つのほうはまだぬけきっていない。脈も速いし。時間の問題でもあるけどつらいんじゃないかな。手っ取り早いのは早く行為に及ぶことだ。そうすればつらい思いせずに回復するよ」
「そうか…。カツラの体調と相談するよ」
ファーンを見送り部屋に戻ると、カツラはさっきと同じ姿勢でぼーっとしていた。
こんな目に遭わされたカツラがタイガは哀れで愛しくて仕方なかった。
「カツラ」
タイガはやさしくカツラを抱き寄せた。
「シャワー浴びたいだろ?」
「うん…」
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