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第329話 20-2

街のモニュメント的な存在のドームがある裏側には有名な建築家がデザインした公園がある。眼前に流れる雄大な川と緑溢れる自然が融合した公園は普段であれば散歩に訪れる人でにぎわっている。しかし今のこの時期、設備点検のため大規模工事が行われており、公園は閉鎖中となり閑散としていた。警備員の巡回はあるが人気はない。人が寄りつかないこの場は最近ではよくない噂が上がる格好のスポットとなりつつあった。日に数回の警備員の巡回をすりぬけ、いかがわしいもの達の溜まり場になっていたのだ。 「そろそろ行くか」 そんな街の状況など露知らず、一人の老人が先程まで閉鎖中の公園のベンチで体を休めていた。彼は遠い異国の地から電車を何回も乗り継ぎ、数時間かけてこの場所にきた。目的の地まであとわずかなのだ。 「じいさん、俺たちに恵んでくれよ?」 老人の背後から若い男が声をかけた。老人は驚いたような顔で振り向いた。 「こいつ、金もってるのか?」 振り向いた老人を見て連れの男が声をかけた男に耳打ちする。それもそのはずで、老人の姿はとても身素晴らしいものだったからだ。ベージュの繋ぎは汚れ黒ずみ、彼の顔も垢でよごれ、白髪まじりのブラウンのヒゲも髪もボサボサに伸びていた。ただ眼鏡の奥の目は精気に溢れ、老人の割にガタイと姿勢はよかった。 しかし大きな登山用リュックを背負った姿にとても大金を持ち歩いているようには見えなかった。 「なんでもいい。金目のもん渡せ。その腕にしているものでもいいんだ」 それは老人の手にある腕時計であった。 「ははは。申し訳ないんだけどこれは高級品じゃないんだ。君たちにあげられるものと言えば…」 老人はこの状況をなんとか穏便に逃れようとうす汚れたズボンの中からコインを取り出した。 「これはどうかな?」 老人の手にある見たことのないコインに男たちは喚き散らした。 「ふざけるなっ!こんなおもちゃみたいなもん!さっさとその時計渡せっ!!」 男たちの行動は早く、一人が背後に周り老人を歯がいじめにし、もう一人が老人の腕から時計をもぎ取った。 「なんだ…これ?」 腕時計を手にした男は言葉を失う。遠目では宝石のように見えた腕時計は高級品ではなく、琥珀原石に入った蝶の化石に文字盤が施されたものであった。手にしたものが虫であると認識した瞬間男が声を上げ、それを放り投げた。 「うわっ、気持ち悪りぃっ」 「あっ!」 よほど大切なものなのかいまだ歯がいじめにされ身動きがとれない老人は慌てて琥珀原石の行方を見守る。地面に落下すれば琥珀原石は粉々に砕けてしまうだろう。 タッ! 一同琥珀原石の行方を見守るが、原石は落ちずに運良くその場に居合わせた人の手に掴まれた。 男二人は息を呑んだ。一瞬、琥珀原石の中から蝶の妖精が現れたのかとその場にいる全員が思った。それほどまでにその者の出現は物音一つしなかった。 「助かったよ…。君がうけとってくれて。どうかな?これから一緒に茶でもしない?」 魔法にかかったように琥珀原石を投げ飛ばした男がその者に声をかけた。彼の意識は老人から完全に目の前の者に移り変わっていた。 「そうそう。この爺さんが困っていたからさ。俺たち助けてたんだ。」 もう一人の男も甘い声で話しかけた。蝶の妖精のようにこの場に場違いなドレスアップした人物は手にした琥珀原石をチラッと見、片眉を上げ自分を口説く男たちを見た。 「助けてたって?全部見てたんだよ!」

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