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第332話 20-5

周りをヤキモキさせようやく打ち合わせ場所に戻ったカツラは早速撮影に入った。 先程までの無表情から一転、笑みを浮かべまさに幸せいっぱいの花嫁のような表情にカメラマンは興奮し、声をかけながらポーズを依頼し、気分よくシャッターを切っていく。 ブーケを手渡されたカツラはブーケに顔を寄せて花嫁お決まりのポーズをとる。優しく笑みを称えた絶世の美女は花の妖精のようにその場の空気を一転させていた。 「いったいどうなってるの?あの変わりようはなに?」 隣に立つシラーの独り言など耳に入らずカツラの撮影の様子を見ていたタイガはようやく斜め下から刺すような視線を感じとった。 「なに?」 「タイガのせいでしょ?カツラ、チラチラこっち見てるもの」 「え?」 「あ、やっぱり?そうかなとわたしも思ったんだけど」 シラーと並んで立つボリジィも話に入る。 「えーっと…なにが?」 女子たちの話がつかめないタイガは一人キョトンとする。シラーは冷めた目、ボリジィは目を輝かせタイガの答えを待っている。 「カツラとアイコンタクトとってるでしょう?」 タイガと二人戻ってきたカツラにうんざりしながらもこのセレモニーの主役の機嫌を損ねては仕事がやりにくいとシラーはカツラに文句を浴びせてやりたい気持ちを堪えてようやく一番の山場である撮影にこぎつけた。 今日ずっと無表情だったカツラが一番気乗りしないと渋っていた撮影であったが、当初の心配をよそにカツラは完璧なモデルとしてポーズをとっていた。 カツラの豹変に最初は呆気にとられたシラーであったが、カツラの目線の先を追うと納得できた。 カツラと目が合うたびにシラーの隣のタイガが優しく微笑み返していたのだ。 「とくに意識は…」 シラーの問いにタイガはそうかなぁと優しい笑みを浮かべ頭をかいた。この笑顔で安心するわけかとシラーは妙に納得してしまう。 「別にいいんだけど。でもタイガ、このままここいいるわけじゃないでしょう?」 シラーの言う通り、タイガの持ち場は別である。カツラの様子が気になり少し様子を見に来ただけなのだ。 「あとの撮影もこんな感じだといいんだけど」 「ぐずるにきまってるじゃない」 「そう…なの?」 カツラのことを未だよく掴みきれていないボリジィは仕方のないことだが呑気なものだ。シラーははぁとため息をつき、本職のモデル顔負けのポーズと表情をとるカツラに視線を向けた。 「これなんてすごくいい。前出しにつかったらいいんじゃないかな?」 カツラとの撮影がよほど楽しかったのかカメラマンが興奮ぎみにいった。 「とてもいいよ!この調子で次も撮ろう」 撮影を終えたカツラにカメラマンが声をかけた。カツラはどうもと軽く会釈しタイガの元にあゆみよる。 「おつかれ、カツラ。俺はそろそろ行かないと」 「えー。もう?全部見てけよ?」 甘えた声でタイガの胸元に両手を添える姿は男女の恋人そのものである。シラーは頭が痛いと言わんばかりに眉間に皺を寄せ、カツラの肩をぐいとひっぱった。 「まだまだあるのよ。早く着替えてきて。誰かさんがとんずらするから時間が押してるのよ?」 「ああ?」 「あっちに衣装があるから」 ボリジィも慌ててシラーに加勢する。なんとかカツラをタイガから引き剥がすことに成功した二人は急いでタイガを見送る。 次のドレスはうってかわってシルバーグレーのドレスだ。ふんわりシフォンのスカートは太ももの下半分はシースルーである。上半身はビスチェで首には赤いチョーカー、手には赤いブーケ。ブロンドのロングヘアはおろしたままで無造作で髪にはドレスと同じ色のベールをつけていた。真っ赤なリップをひいた花嫁姿のカツラは妖艶であった。 「色白だからドレスが映えるわね」 男とはいえ自分の推薦したモデルがこうもイメージ通りに衣装を着こなすことに感心したシラーはご機嫌である。 「タイガは?」 「もうとっくに帰ったわよ」 ぶすっとしたカツラの顔を見て、シラーはいじわるな笑みを浮かべる。 「今回は無理に笑わなくても大丈夫よ。ドレスのイメージ通りクールな感じで」

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