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𝐷𝐴𝑌 𝟙 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟝 ②
「ところでここのはキッチンと呼ぶのは、お粗末なくらいですが、、料理はされます?」
「いえ料理はしないのでこれで充分ですよ」
「そうでしたか、よかった!あ〜でしたら Rock the Ocean っていう飲食店がありましてね。昼はカフェで夜はバーになるんですよ!僕の同級生のお店なんで口聞いたらサービスしてくれるんでよければぜひ!」
『Rock the Ocean、、?』
「あー店の名前おかしいでしょ?ロックバンドが大好きな奴なんで、ロックと海ってそのまま過ぎて笑っちゃいますよね!このアパートから歩いて5分もかからないですよっ」
「そうなんですか。ありがとうございます、是非行かせてもらいます」
「それじゃこれ鍵です」
「いろいろありがとうございます」
「こちらこそ須野の海をお願いしますね!何かあったらいつでも連絡して下さいっ。それじゃ失礼します」
ギーッ、バタン!と立て付け悪い音をさせて高瀬は出て行った。一人になった礼は風呂を覗く。仕事柄シャワー浴びる事は多くて、蛇口をひねってシャワーの水圧など確認してみる。
古いながらも最低限の冷蔵庫や洗濯機やエアコンは揃っていてこれで家賃要らないのはまったく申し分ない。
事前にいくつか送っていた段ボールが積まれているが、少なく二箱ほどで収まる程だ。荷物を開けると黄色と赤色が目立つ服が見える。
まさにこのユニフォームのニ色こそが人の命を守る仕事としての誇り。そんなライフセーバーとして10年、多くの海を見て肌に焼き付けた日差しと海水は一つとして同じものはない。
そして礼が波に揺られ漂流し辿り着いたのがこの須野海岸。
「とりあえず先にパソコン置くか」
数着あるユニフォームを中から出しその下から埋もれるように入っていたノートパソコンをとりだす。段ボールの一箱を空にすると裏返してテーブルにしてパソコンを置いた。
"須野海岸"と検索ワードを入れてみるとヒットする項目はたくさん出てくるがやはり多く見かけるのは記憶に新しいあの記事。
去年の夏起きた水難死亡事故はメディアにも取り上げられた。事故が起きたのは、ライフセーバーが常駐していない夜中で男女数人のグループで遊びに来ていた大学生の男子だったと。
しかも遊泳禁止区域での事故、そしてお酒が入った状態という状況での事故は防ぎようがないにせよ須野のライフセーバーにとってはショックな出来事だった。
「飲酒による体温の低下、激しい筋痙攣 での溺死か」
勤務開始までになるべく須野の現状や過去の事故などデータ収集をし問題点などを把握する。
あとは何と言っても実際の海を見ないことには始まらない。
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