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𝐷𝐴𝑌 𝟞 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟘 ⑤
反応してしまうのは当たり前だ。若手サーファー大会3連覇の偉業を達成した"由井樹未斗"は麻比呂の実兄でプロサーファーで知らない者はいない。
――実際に過去最高点での優勝になったわけですが周りの期待やジュニアサーファーの憧れの的になってる実感ありますか?
「いえ、ありませんよ。でも自分自身も子供の頃に生で見た由井さんのチューブライディングは忘れません。それに憧れた気持ちと同じですかね。まだ気が早いでけど3連覇とるつもりで来年まで今以上の技術向上を目指していますし、もちろん他の大会にも積極的に出場します。僕にはサーフィンしかないですから」
『……ふざけんなっ、、』
麻比呂の雑誌を持つ手に力が入りクシャっと端が折れ曲がる。この界隈を離れてしばらく経っても目や耳に入る情報にはやはり感情が動いてしまう。
「おっ!タカちゃん来てたのか?仕事サボって人の嫁ナンパしき来たのかよっ、こいつめ!」
「いま不動産業は閑散期だからね。それに比べこの店は繁忙期の始まり、今日もお客さんいっぱい来たんだって?」
「まあな。暇ならたまに手伝いに来るか?タダ働きでいいなら。はははっ」
少しばかり外出していた父親が戻ってきた。子供の頃から仲の良い同級生の二人は家族ぐるみで仲良し。このお店ができた5年前、父親に物件を紹介したのも高瀬。
「あれっ?、、麻比呂は?」
「あっち。ショップで荷物やってる」
姿を見つけてショップに目をやると雑誌を手に真剣に見入っている麻比呂がいて後ろから近づいて覗いた。
「麻比呂っ、何見てんだ?」
『やっ別に何も、、!おかえり』
「おっ!新しいWave Style来たか。えーっと、R-23…浦上しゅうー…」
『お父さん、俺ちょっと奥で寝てるから!オープンしたら起こして』
段ボールの上にボンっと雑誌を置いて奥の部屋へ入っていった。そんな麻比呂の背中にはいろんな感情がにじみ出ていた。
日が沈んだ須野海岸には徐々に明かりが少なくなり海の家や付近のショップも閉店時間。海水浴客用の駐車場からも車の姿はなくなっていた。
Rock the Oceanの夜間営業はあと30分で始まる。深夜遅くまで灯りが灯るこの店には性別、年齢関係なく集まり常連も一見さんも仲間同然だ。
◆◇◆◇◆
「真壁さん俺ら帰りますけど」
「大丈夫ですか?何か手伝うことあります?」
ライフセーバーは全員帰宅し、暗い浜辺に唯一灯る警備本部。東とつばさはデスクのパソコンのキーボードを軽快に弾く礼に言うと顔を上げて手を止めた。
「大丈夫です、ありがとうございます。自分もあと少しで終わるのですぐ帰りますよ」
「わかりました。ではお先に」
ガソリンわずかなつばさの車は茨城からの形跡が残っていた。車のルーフキャリアに載せられた使いこんだロングボードは昨日までの戦いを終えて休んでいる。
運転席のつばさは車内の全ての窓を全開に開けてエアコンを切り涼しい風を取り込んで走っていく。助手席の東は座席を倒してやっと長い一日を終え身体を休めた。
「真壁さん優しい人で良かったな〜もっといろいろ喋ってみたいよ。あの人がしてる仕事とか経験してみたいしさ」
「何言ってんだ。つばさが真壁さんのやってる仕事なんて出来る訳ないだろ」
「そんなの分かんねーだろ。確かにパソコンは全く使えなし頭悪いけど。気合いで何となるっしょ!協会の人だろうと同じライフセーバーには変わりないんだから」
「何もわかってないな。あの人がここに来た理由何となく想像つくだろ?」
「はっ?いやわかんない」
「俺たちを監視して出来ない奴はクビだね。俺は大丈夫だろうけど、つばさは早速遅刻でアウトかも!?」
「えっ、嘘!マジ?そうゆう事?」
「なんてな。冗談だよっ!でも用心しておいた方がいいかも。俺もこうゆうの初めてだから分かんね」
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