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𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟙 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟚 ③
雨が小降りになるとぽつぽつと客も帰り始め店には東とつばさ、そして礼の三人だけの貸切状態になった。キッチンからから次々と料理が運びこまれたテーブルはすでにいっぱいだ。
「はいお待ち〜パワーダブルピリ辛ロコモコ丼、新メニュー召し上がれ!」
「ちょっとおじさんこんなに!?」
「つばさ聞いたぞ、この間の大会!準優勝おめでとう!すごいじゃないか、今日はお祝いだ!奢りだから好きなだけ食えよ」
「マジですか!じゃあ遠慮なく〜」
長い付き合いの常連客と店長と言うよりも親子のような二人を見ている礼の隣に、よっこらしょと座る父親に問いかけた。
「つばさくんと店長さんは仲いいんですか?」
「そうだな、つばさも子供の頃から知ってるし息子みたいなもんだな」
「じゃ二人目の息子さんって感じなんですね」
礼が言ったその言葉に一瞬その場が凍りついたよう全員の動きが止まった。樹未斗の存在を知らない礼にとってもちろん悪気はなく、何だかよく分からないまま全員が目逸らすような空気に包まれて静かになった。
「えっとー…すいません何か、、」
『そうですね!つばさくんは兄みたいな存在ですよ。子供の時からよく遊んでくれました。ねっ、つばさくん』
場の空気を打破しようと口を開いたのは麻比呂。少しヒヤッとした数秒間を無かったかのように普通に話し始める。
「あーそうそう!麻比呂は弟同然でっ」
「あああ!そうだな!麻比呂は学校から帰ると宿題もせずすぐに、つばさのいる海に遊びに行ってな。よく母親に叱られてたもんだよ」
「おじさん、それ懐かしい〜麻比呂が小学生です俺が中学の時だっけ?」
「そう、ちょうどつばさがサーフィンを始めた頃じゃないか」
懐かしい話に花を咲かせ、麻比呂も交えて思い出話が始まる。東さえも知らない初めて聞く二人の子供の話を頷きながら興味津々に聞いている。
「そういえば真壁くんは、スポーツは?」
「あー…いや自分は特にそういったのは何も」
「意外だね。そんないい体してるのに〜もったいない!だけど、こういう仕事をしてるってこと海は好きなんだろ?」
「えぇまぁ」
礼の過去の話にみんな耳を傾けるがいまいち歯切れが悪く自分自身の話をするのは苦手だと言わんばかりに話題をすり替えた。
「みんな付き合い長く地元愛も強くて仲良しで羨ましいですよ」
「あー俺は違いますよ。俺は北海道出身で子供の頃からあまり海で泳ぐ事に縁がない生活で。その反動ですかね、高校卒業したら地元を出てこっちの大学に来たんです」
「そう!いやマジで東は初めて会ったとき白くてひょろっとしてて今とは別人だったんですよー!あっ見ます?確か当時の写真がー…」
「いいってバカっ!やめろよっ」
つばさの手からスマホを取り上げて過去の写真を必死に阻止した。ニヤニヤと笑みを浮かべる、つばさのおでこをスマホでバシッと叩いた東。
「そう言えば真壁くんはどこ出身?」
「自分は、、家庭が転勤族で幼い頃から各地を転々としていたのであまり長く過ごした場所がなくて、いわゆる地元っていう感覚が分からないんですよね」
「そうなのか〜それは大変だなぁ」
「それに慣れてるからですかね。今みたいに色んな海岸を渡り歩く生活が意外にもしっくりして性に合ってる気がします。だから、、あまり寂しさはありません」
初めて聞く礼の身の上話に全員がお酒も食事も手を付けずじっと聞き入る。同じライフセーバーでも全く違う環境にいる礼は自ら選んで、そうゆう生活をしているんだと東とつばさも何か胸を打つものがあった。
「あれ?それで今はどこに家借りてるんですか?」
「この上の坂を上がって少し歩いた場所のアパートを借りてます。そこの不動産屋の方にこの店紹介されてたんです」
それを聞いた麻比呂は数日前の店での会話思い出した。確か高瀬がお店に来て母親と話していた内容が、こっちに来たばかりの29歳のイケメンライフセーバーに部屋を貸したと。
しかもあの取り壊し予定のボロアパートはちょうどこの店の裏の坂を上がった場所だ。
『あ、、もしかして高瀬さんのボロアパートに住んでるのってー…』
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