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𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟛 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟠 ②

 "お兄ちゃん僕ね、夢があるんだ"  "どんな夢?" "お兄ちゃんがサーフィンで、日本で一番になって僕が二番になる!"  "麻比呂が二番目に?一番じゃなくて?" "だって一番はお兄ちゃんのものだから"  幼少時代の年の差はとても大きく、7歳も上の兄は超える相手ではなく一歩後ろから見ていたい相手。サーフィンを始めたばかりの中学生の樹未斗のサーフボードを浜辺に置いて、ボードに乗りライディングするマネをしながら会話をする。  "一番は人に譲るものじゃないし、二番を目指してちゃ上手くなんてなれないよ" "そうなの?"  "だから麻比呂も一番を目指すんだよ" "うん、お兄ちゃんと一緒に一番になるよ"  "だけどその前に麻比呂は泳げるようにならないとな!物事には順番があるんだ" "わかった、泳ぐ練習頑張る" まだ泳ぎもままならないくせに大きな夢を掲げて豪語した活発な子供の夢はまだ今のところ叶ってはいない。 それどころかその夢されも失いかけていた。 『、、んー…暑っ、またあの夢……』    エアコンのタイマーが切れた後の部屋はサウナのように熱が篭って、寝苦しさで目が覚め身体を起こした麻比呂。半袖のTシャツも汗がじっとりと気持ち悪くて首の汗を手で拭う。  最近よく見る夢はなぜか決まって子供の頃、兄弟で過ごした日々の記憶。微かに覚えているような気もするが定かではない。  カーテンからわずかに漏れる光で朝だと確認し手を伸ばしてスマホを開くと時刻は4時50分と表示していた。また変な時間に目が覚めて脳は起きてしまっている。  礼と出会ってからずっとこんな調子だった。夢を見た後は必ず礼の顔が頭に浮かんでしばらく消えない。  『何で、、あの人がいいつも出てくるんだよ。確かに似てるけど、、だからって……』    洗面所に行き冷たい水を出して両手でバシャバシャを勢いよく汗を飛ばすように顔を洗った。 蛇口をひねって水が止まると外から車の音と話し声が聞こえてくる。顔をタオルで拭きながら廊下に出て窓から外を見た。  『つばさくん、、と三葉ちゃん?』  家の前に止まった車はつばさの見慣れた車と三葉のサーフボードが上から見え、車を降りた二人はそのままコンテナハウスに歩いて行く。 そんな二人に麻比呂は窓を開けて声をかける。  『どうしたの?』  「あれ?麻比呂!何だよこんな時間に起きてんのか?それともこれから寝るのか?この不良めっ」  『それはこっちのセリフ。不法侵入!』  「早朝にごめんね。昨日のうちにおばさんには連絡して伝えたんだけど、いつもの取りに会場向かう前に寄るって」  『って事は三葉ちゃんもしかして試合?』  「今日は久しぶりに大きな大会なの」  「そんで俺は運転手。出場はしないけど生で見たい大会ではあるからさ」  そう話ながらコンテナハウスに入った三葉はいつもの定位置に置かれたリーシュコードを取り出した。簡単に言えばサーフボードと体をつなぐ命綱で大切な役割を担う道具。    サーフボードが流されて沖に取り残されたり流れたボードが人に当たらないように、ロープ状の形をしていて足首とボードにつける。  これは三葉とって一つの試合前ルーティーンや儀式のようなもの。もちろんいつも使う物として自身も持っているが、それは使用せず必ずここに取りに来て樹未斗のリーシュコードを使う。  それにはとても意味があった。サーフィンは大自然と共存するスポーツで、つねに危険と隣り合わせでもある。波乗り歴が長くなってもそれは忘れてはいけない。  "行ってきます""無事に戻りました" 側にいていつも言い合っていたこの言葉をリーシュコードを通して伝える"そして一緒に戦う"そんな意味込めていた。  三葉と樹未斗、二人は恋人同士だった。  「じぁ麻比呂、今日は日帰りでまた夜に寄るからおばさんたちにそう伝えてくれる?」  『あっ、うん』  「ありがと。それじゃ行ってくるわね」  「じゃな!夜更かししないでしっかり働けよっ」  『あっ!ちょっと、、!』  「ん?どした!?」  『あー…その。その試合、、俺も連れて行ってくれない?』  「えっ!麻比呂がサーフィンの試合見に行きたいなんてどうしたんだよ?今まで誘っても来やしなかったのに」  「私は別にいいけど。オーディエンスは多い方が盛り上がるしね」  『待ってて5分!いやっ、3分!30秒で準備してくるからっ』  「大丈夫よ。そんなに急いでないから、車で待ってるわね」  クールは三葉は試合前でも緊張を見せない冷静さでそう言い車内に戻った。麻比呂は急いで、自分の部屋に戻り着替をしてリュックに荷物を投げるように入れると二人の待つ車に向かった。  

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