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𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟛 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟠 ④

 "浦上周太朗"の名前を聞くと何故が心臓がゾワっとする。その現象は何なのかよくわからないがその名前に対して無関心と言うわけではなさそうだ。だけどそれを認めたくない自分もいる。  『だ、だから?知ってるけど何でそいつが俺が来たのと関係あるわけ?』  「あれー?てっきり浦島太郎を実力拝見したくて来たのかと!」  『何それ!実力拝見って、、そもそも俺はサーフィンやってないし。あとさぁ、その浦島太郎って何!?』  「浦上周太朗…ウラガミシュウタロウ……ウラシマタロウ……浦島太郎……ほらなっ!」  「、、、つまんな」  そう言ってスタスタの少し大きめのビニールバッグ一個を手に持って歩き出す麻比呂。  「おいっ、荷物持っていけよっ!」  『つまんないこと言ったから、後はよろしく』  『あっ、麻比呂待てっ!重いやつ置いてくなよな〜』  絶賛サーフィン日和と太陽がアピールするような日差しと緩やかな風に煽られて、早い時間にも関わらず観客達もちらほらと集まり出していた。  初めて来た海岸ではないし海なんて毎日のように見ている環境にいる。だけどどうしてか会場に近づくにつれマイクを通したアナウンスの声や選手だと思われる姿が目に入る度胸が高なっていくのを確かに感じる。  砂浜に足を踏み入れ会場の競技エリアを示すエリアフラッグがいくつか並び、その一本がパタパタと靡いている側までくるとあの頃に戻ったよな感覚が身体を包んだ。  『この海ー…懐かしい……な』  頭に浮かぶのは樹未斗がこの広い海を独り占めするほどの見事なライディング。そしてオーディエンス達の割れるような歓声だ。  「あっいたいた。麻比呂お前なぁ〜…麻比呂!?何ぼーっとしてんだよ、大丈夫か?」  『、、、なんでさ海って変わらないんだろうね。6年も経ってるのに……あの頃のまま』  「はっ?麻比呂どうした?暑さでイカちまったか!?」  『こっちは何もかも変わったのに。いつまで経っても海は同じままなんてズルいと思わない?思い出すなって方が無理だよ』  その言葉の真髄をつばさも分かっていた。どこかで樹未斗のサーフィンの話はタブーの様でもあったが、今自ら口に出してあの日々を巡らせている麻比呂。  "まぁな…"とだけ言ってつばさもその先の言葉に詰まった。そんな空気を遮るように、二人を見つけた三葉が元気に駆け酔ってくる。  「お疲れっ、荷物ありがとう!荷物重かったでしょ」  「、、ったくほんとだよ!何でこんなに重いんだよ〜余計なものばっか入ってじゃん?なぁ麻比呂!」  『……つばさくん、そんな体格しといて意外と力ないからね』  「ふふっ、確かに!その筋肉見掛け倒しね〜」  「麻比呂は軽いのしか持ってねーだろっ!ったく、、で!?今日のヒート表は?」  三葉が手にしているカラフルは数字が入ったシャツ型のゼッケンとヒート表はサーフィンの大会には必要不可欠。  サーフィンはライディングの技の得点を競う競技だ。ショート、ロング、オープン、ビギナー、メン、ウィメンズ、キッズと幾つかのクラス分かれて競い合う。  『私は第3ヒート。ちょうど真ん中ね』

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