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𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟛 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟠 ⑥
大会がスタートして賑わう海岸に歓声が響く。そして三葉の出番が近づいて、つばさは双眼鏡を構える。
「お〜キレた波してんじゃん!オフショアだし」
『ん?……つまりどういうこと?』
「あーそっか麻比呂ずいぶんサーフィンから離れてるからな、用語忘れたか」
『悪かったね。何も知らなくて』
「つまり岸から海に向かって風が吹いて綺麗な波になってるコンディションの良い波ってことだよ。さっきまで少し風強かったけど、天気が味方してくれたな」
『天気の運もサーファーの実力のうちだっけ?』
「まさにその通り!」
樹未斗が言っていた言葉。自然と共存するスポーツならではの楽しさをいつも話していたのを思い出した。
"予想通りにいかないからこそやりがいがある"
4人の女子達が沖へと走り波を待つ。1つの波に乗れるのは1人だけという決まりがある、選手達はいい波を掴もうと、乗る為の優先権をとれる位置を確保する一方で波をめぐる選手同士のかけひきが始まる。
ライディングのテクニック以外にも高い得点を取るために必要なこともある。
そして30分間の時間がカウントを始めスタートした。声を出す客もいれば黙って見ている客。
次々と波に乗ってあらゆる技を見せつけるように披露する女子選手達。
三葉もタイミングを見計らって大技を狙う波を見極める。1本、2本と点数が上がらないライディングが続くが、3本目の波にここだっ!とボードに横ばいになった体を持ち上げ上に立ちテイクオフ。
高い波に平行にボードを滑らせ大きな振り幅で波のトップにボード持ち上げると、波が崩れる反動を利用してボードを返し綺麗なターンを決めるオフザリップを成功させた。そして完璧なバランスで体制を崩すことなく着地をするとついガッツポーズが出た。
「よーっしゃ!!三葉ナイス!!」
『三葉ちゃん、凄い』
まだサーフィンを始めたての三葉の試合の記憶しかない麻比呂はこの6年間の重さを知った。
そして8.15の高得点で見事第2ラウンド進出を決めた三葉。
それから徐々に進んでいく大会に太陽はジリジリと海を容赦なく照りつけていく。
〈ロングメン 第5ヒート開始です〉
アナウンスが第1ラウンドの最後のヒートをマイクで伝えると会場を離れていた人達が野次馬のように集まり始めると三葉も二人と合流した。
「ちょちょちょ、いきなりギャラリー増え過ぎてね?何事だ!?」
「ロングメンの第5ヒートって」
「あー浦島太郎か!だったよなっ麻比呂!」
『何で俺に聞くわけ?』
「だって、浦島太郎見たいんだろ?さっきしっかりチェックしてたじゃん」
「そうなの?浦上くん気になってんだ?あ〜だから今日付いてくるなんて言ったのね、納得」
『だから違うっー…ってもう!』
今大会間違いなく一番の見どころが始まる。
そして麻比呂の鼓動も高まって自然と胸に手を当てた。
二人には強がってそう言うけれど興味を掻き立てられる存在の出現に久しく味わっていないこの昂 りは麻比呂の今後を大きく変える事になる。
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