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𝐷𝐴𝑌 𝟙𝟡 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟚𝟝

 パチっと突然目が覚めた麻比呂は半袖から出る肌をさすって横向き縮こまる。空いた窓からは雨音が聞こえてカーテンを微かに濡らしていた。  『寒っ、、いま何時、、?』  雨のせいか露出した腕や足に当たる空気は冷たい。スマホに手を伸ばして画面に触れると深夜1時と時刻を知らせる。  窓を閉めようと手をかけると外からギーッ、バタンッと何やら嫌な予感の音が聞こえて外を覗く。予想していた通り、帰宅した際にしっかり閉まっていなかったのか門扉が雨風で開閉し大きな音鳴らしている。  面倒だと思いながらも夜中に響く音は近所迷惑にもなる。仕方なく一階まで降り小雨の中小走りで外に出た。扉のフックをしっかり掛けて大丈夫だと確認し戻ろうと振り返った瞬間ガタンッと近くで音がした。  『は?ちょ、っ、今度は何ッ!?』  誰もいない1人だけの家に不穏な物音。家の中というより外のコンテナハウスの方から聴こえてくる。この風で何かが落ちたのだろうと思いながらも、足取りは重く一応警戒しながら近づく。 特に何かが落ちた形跡も無ければ人影もない。  『もしや……中?』  コンテナハウスの扉は少し隙間が空いていて、麻比呂はゆっくり手を掛けて開けてみるが暗くて何も見えない。一歩足を踏み入れてライトのスイッチがある場所に手を伸ばした。 その時"わっっ!!!"と突然飛び出した何かに驚き、後ずさった拍子に壁に身体をぶつかると飾ってあるトロフィーがグラッと揺れた。  暗い室内に動く黄色に光る丸が二つ。ぶつけた右腕をさすりながらライトのスイッチをつけると、明るくなった部屋に黒い毛をした猫が殺気立って身構えて麻比呂をジッと見ていた。  『はぁ、猫かよ。しっしっ!あっちいけっ』  動物嫌いな麻比呂は距離をとりながら手を振って追い払う。野良猫が扉の隙間から入って雨宿りでもしていたのだろう。そして猫はそそくさと部屋から出て行った。  大切な物が詰まったこの部屋のモノ(思い出)。だけどこのモノ達は更新されることなくここにあるだけ。 猫のせいだろうか倒れかかったサーフボードが棚にギリギリ支えられて斜めに今にも床に落ちそうだ。  それを見た真比呂は戻そうとボードを掴む止まってじっと見つめる。それは外に比べ明らかに傷や汚れが多く使い込んでいた。  『これ……お兄ちゃんのお気に入りのやつだったな』  いくつもあるサーフボードの中でも一番、樹未斗が気に入って使っていたものだ。特に思いれ深く見ているだけで颯爽と波に乗る樹未斗が頭に浮かび、ボードに刻まれた傷の一つ一つが記憶とリンクする。  ノーズに溜まった埃を手で払いながら麻比呂はボード全体にすーっと手を滑らす。懐かしい手触りは何か麻比呂を奮い立たせるものがあった。    『、、ねぇ俺も出来るかな。このボードに立つ資格あるかな、、お兄ちゃん』  麻比呂は小さな声で語りかけるように言う。もちろんそれに返事が返ってくる事はないが、じっとしていられない衝動が襲う。  そしてサーフボードを持つ手が強くなり突然抱えて気付いたら外に出て走り出していた。

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