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𝐷𝐴𝑌 𝟚𝟡 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟛𝟛
溺水事故から2日が経ち少年達は無事に回復に向かい明日にも退院すると病院から須野海岸警備本部に連絡が入った。
受話器を耳に当て電話をしている礼の後ろでつばさが当日現場にいなかった東に当時の様子などを報告している。
"それでは"と会話の終わりの言葉が出ると東とつばさの視線は一同に礼に向いた。
「ひとまず経過は良好で後遺症や合併症等は見られないそうです」
「良かったあぁーやっぱそこ心配だったんで」
「ですね、安心しました」
安堵の笑みで重い雰囲気を断ち切ったつばさに対し堅い表情のまま、事故の様子が書かれた手元の報告書を見ながら礼に近寄る東。
「あの、救助したのは真壁さんだと今つばさから聞きました。改めてありがとうございます。そんな大変なに不在にしていて申し訳無かったです」
「いえ、ライフセーバーとして当然の事をしたまでですから。東さんも昨日までの大会でお疲れでしょう」
「あっそうじゃん!バタバタしててまだ聞いてなかったけど、大会の結果どうだったんだよ?」
聞くまでもなく結果を出してメダルでも持って自慢してくるかと思いきやそんな空気感は微塵も出さない東は小さく呟く。
「負けた。一回戦落ち」
「はぁ!?嘘だろ!?」
「こんな嘘ついてどうすんだよ、本当だよ」
「じゃーさ体調でも悪かったのかよ?」
「そんな驚く事か?これが俺の実力ってだけな話。ずっと勝ち続けるなんて無理だろ」
東の少し苛立ちを含んだような口ぶりにそれ以上つばさも話を続けるのを辞め"そうか"とだけ言った。いつもお互いの試合の結果結果は良くも悪くも報告し合い意識を高め合っていた。
この日はえらく無気力感やネガティブ思考が目に付く東を気掛かりでじっと見ていた。
朝礼が始まり東とつばさが並ぶ一歩斜め後ろに礼が腕を後ろに組んで立っている。一日のスケジュールと天候や波の状態チェックとお決まり流れで朝礼が進み10人のライブセーバーがそれを真剣に聞いていた。
朝まだ早い段階でもすでにポツポツと早くも遊泳客が見えレジャーシートを敷いて場所を確保する姿が見える。夏休み中の家族連れのグループもき警備本部の方へ黄色のヒーローの集まりに視線を向けている。
「そして最後に一昨日起こった事故について真壁さんから説明があります」
ライブセーバー達全員もずっと気になっていて仕事が起こってから仲間同士での会話には必ず少年達の話題になっていた。組んだ手を外して二歩前に出た礼が口を開く。
「一昨日の溺水事故ですが溺者三名とも容体は良好との事で病院から連絡が入りました。臓器や脳への損傷は無く現時点で後遺症等は見られないそうです」
礼の報告を聞いてそこにいる全員が安堵の表情をして張り詰めていた緊張感は一斉に解け、隣同士で喜びの言葉を交わしザワザワとする。
「本当に大事に至らなくて良かったと思います。ただ一番の問題は事故が起きた事ではなくその後の対応、つまりあの状態でライブセーバーが適切な行動が出来ていたか?とそこが重要な点です」
ザワザワが止んで再び礼に注目が集まると、東とつばさも突然の会話の方向転換に何だ?と二人は顔を合わせた。
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