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𝐷𝐴𝑌 𝟚𝟡 ⇨ 𝐷𝐴𝑌 𝟛𝟛 ②

 身体を掴んだつばさを振り払い、まだ礼に向かっていく東をライフセーバー全員で止めに入る。 "辞めて下さい""東さん!"そんな声が飛び交う中で状況を分かっていない遊泳客の中にはスマホのカメラを向ける者もいた。  「あー皆さん安心して下さい!これは想定訓練中です。お騒がせしてすいません!!」  ライフセーバー達の輪の中から飛び出すように出たつばさは第一声にそう大きな声で、遊泳客達に言った。いささか無理があるがこの場で突如思いつく言い訳としてはこれ以上は無理だろう。 それを聞いて後輩達何人かが、つばさに続いて客へのフォローに回る。  ザワザワとしていた客達を一応は納得させて全員頭を下げながら何とか一旦はその場を収集させた。  「真壁さんッ、大丈夫ですかっ!!?」  「別になんて事ないです」  大した傷ではないと心配かけないよう穏やかな顔見せて答えた礼。つばさはまだ興奮収まらない東を身体を強く引き"こっち来い!"と不貞腐れた顔した東に怒りをぶつけながら連れて行った。  「何でこんな事に、、僕のせいだ……」 自分の行いで起きてしまった惨事だと責任の感じていてもたってもいられなくなった青田はその場を走って去っていった。  「あっ!青田っ、待てよっどこにー…」  「追わなくていいです。今はそっとしておいた方がいいでしょう」  「でも……東さんとつばささんもどこか行ったし皆バラバラになって、どうしたらいいんですか?」  こんな出来事初めてだと全員が動揺の中、辺りを見回して乱れた服を整えた礼がその場を宥めるように口を開く。  「とにかく遊泳客も増えてきました。今ここにいるメンバーで今日は行います。いつも通りです」  「……はい」  「では今日も一日無事故でお願いします」  そして何も無かったように須野の海に黄色と赤の精鋭達が散らばり、ダイヤモンドの煌めきのような水面の中にいる遊泳客に目を向け変わらない一日が過ぎていった。  ◆◇◆◇◆  カウンターの高めの椅子に座り壁にもたれスマホを見ている麻比呂の額は汗に滲んでいた。肩までたくし上げた袖も40度近い気温の中では気休めにもならない。  手元のスマホからは誰かがネット上に上げたサーフィンのレッスン動画の音声が静まった店内に聞こえている。見入っていると入り口のドアが開き人影を感じて麻比呂は目線をスマホから外した。    『お客さん、すいまー…って何だ高瀬さんか』  「おいっ、何だって失礼だろ。麻比呂、そうゆうお父さんの悪いところ真似するなよ」  この時期毎日活気に溢れるRock the Oceanの店内はいつもと違った。入る前からそれに勘づいていた高瀬はキョロキョロとあたりを見回す。  『それはツケを払ってから言って下さいよ』  「まっ、、それはそうか。あれ?今店に麻比呂だけ?しかも昼の飯時(めしどき)にお客がいないの珍しいな」  麻比呂は"アレ"と入り口に貼ってある紙を指さして上の天井のエアコンを目線を上げた。「本日空調機故障の為、昼間の営業休みます」と書いた紙をじっくりと読んだ高瀬はやっと店内の蒸し暑さに気付いた。  『しかもこの時期業者も忙しくてすぐには来れないって。だから今お父さんたちが扇風機やら代わりになる買いに行ってるんです』  「何だよ〜書き入れ時に災難だな。せっかく来たけどそれじゃしょうがないな」  『飲み物ぐらい出しますよ。ここに1人で留守番してても暇だし』  キッチンに行き簡単なドリンクを用意する麻比呂の側で椅子座りテーブルにあるメニュー表を打ち上がりにパタパタと仰ぎ出す高瀬。    「サーフィン再開してどうだ?楽しいか?」  『やっと少しずつ感覚戻ってきたかなって感じですかね。朝早くつばさくんにレクチャーしてもらって』  「ああそう言えば、つばさくんさっき須野海岸管理本部に勢ぞろいでいたな」  『つばさくんが?勢揃いって?』  「つばさくんと東くん。それとうちのアパートのあのイケメンの青年。聞こえた話だと昨日の騒動でしばらく謹慎って感じになるんじゃないかな?」  『は?何その話全然知らないですけどっ?』  「俺も昨夜聞いて驚いたけどそんな大した騒動にはならないと思ってたよ。けどどうやら動画を撮ってた泳ぎに来てた客がSNSに載せて拡散されたらしい」  全く何を言ってるのかわからない麻比呂はグイグイと高瀬に詰め寄り質問攻めが始まる。  「何があったんですか?誰が謹慎って?」  「それはまぁ当事者の2人だろう。東くんとー…」  「礼さん!?礼さんがどうしたってッ!!?」  「ちょっ、麻比呂落ちつけよ。昨日の朝早くに東くんと彼が客もみんないる前で殴りあいのケンカをしたって話だ」

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