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ありがとう

「うっ、く……止めろっ、省吾……!」  錦に初めて下の名前で呼ばれ、省吾はようやく性器から口を放した。限界に近そうな性器は脈動を打ち、錦は肩で息をしている。 「あのな……俺、お前みたいに若くないから。一回イくと、その先が辛いんだよ……」 「……でもこの状況で止めるのも辛そうだ」  あと少し刺激を与えただけで弾けてしまいそうな錦を見ていると、同じ男なだけに辛さが伝わってくる。 「辛そうに見えるのは、俺も同じだけど」  息を整えた錦は幾分余裕を取り戻した顔をして、省吾の性器を下着の上からやんわりと握った。 「いてっ……」 「力入れて握ってないだろ。勃起しすぎて痛いとか、若いにもほどがある」 「そりゃこんな公太郎さん見ていたら、限界まで勃つだろ……」 「びっくりだよ。……絶対途中で萎えると思ったのに。お前、本当に俺のこと抱けるんだな」 「告白したとき、余裕で抱けるって言ったろ」 「実際目にすると無理だと思ったんだよ。なのにこんなバカみたいに勃起するとか……ちょっと顔がにやけそう」  照れながら破顔させた錦に、省吾は思わず前かがみになった。全く、どこまでギャップを見せて自分を興奮させれば気が済むんだと悪態を吐きたくなる。 「ちょっと、マジで無理。あんまり煽るな。我慢も限界があるから」 「我慢しなきゃいいだろ。前みたいに一回抜いてやろうか?」 「あんたの中でイきたいから、いい」  省吾は錦の下着を剥ぎ取ると、自分も下着を脱ぐ。互いに一糸まとわぬ姿になると流石に少し心もとなかった。  省吾は棚の裏に隠していたローションを取り出す。いずれ必要になればと思って購入したローションだが、こんなに早く出番があるとは思ってもいなかった。  動画などで勉強したつもりだが錦を傷付けない自信がなく、受け入れてもらうための準備は錦の手ほどきを受ける。  久しぶりだと言った錦の言葉に嘘はなく、秘所は硬く閉ざされていた。ローションのぬめりを借りてゆっくり指を中へ沈めていくが、秘所は異物の侵入を拒んでいるようだった。  こんな小さな場所に本当に自分のものを挿入してもいいのかと不安になる。錦の様子を伺いながら指を増やしてみるが、大丈夫と言葉が返ってくるだけで本当のことは分からない。 「公太郎さん。抱きたいって気持ちは本当だけど、無理強いはしたくない。あんたが苦痛なら俺は別に……」 「バカ。ここで止められる方が苦痛だ。それに俺が苦痛に思っているかは、見れば分かるだろ」  錦の性器は変わらず張り詰めたままだった。 「入口がちょっとキツイだけで、ちゃんと良いから。お前うまいよ」 「そりゃ光栄」  指を三本に増やし、中をほぐすようにそこを搔きまわす。ローションの湿った音と、鼻にかかった錦の甘い吐息が部屋に響いた。その淫靡な音に、耳から犯されているような気分になる。  錦の性器から透明な露が伝うのを見た省吾は、もう限界だと錦の中から指を引き抜いた。 「ごめん、出来るだけ優しくするから」  省吾は小さな秘所に性器をあてがうと、ゆっくり腰を押し進める。指を受け入れていたとはいえ、指よりも重量のある省吾の性器を受け入れている秘所は、流石に苦しそうだった。  だが錦は泣き言一つ漏らさない。少しでも苦痛を訴えると、省吾が身を引くことを知っているようだった。  時間をかけて奥までたどり着いた省吾は、錦の身体をぎゅっと抱きしめる。  錦の中に入れてもらえたことが幸せだった。錦が自分の腕の中にいることも信じられない。ずっとこうしたいと思っていた。だが絶対に叶わない夢だと思っていた。 「公太郎さん、ありがとう」  気付けば省吾はそう言っていた。セックス中にありがとうなんて、ムードに欠ける気がする。だが言わずにはいられなかった。それほどまでに、省吾は身も心も幸福に包まれていた。  錦は省吾に微笑みかけると、省吾の背に腕を回す。二人を隔てるものは何一つない。 「こっちこそ、こんな俺を好きになってくれてありがとうな」  自然と二人の唇が重なる。年齢も性別も、二人には何の障害にもならなかった。  もう一度こうして抱き合えるのは一年以上先だ。だからこそ今の時間を大切に、記憶に刻み込もうと省吾は思う。ありったけの愛を錦に感じさせたいと願うのだった。

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