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第30話

カーテンから漏れる明かりで目を覚ませばそこに楓の姿はなくて 起き上がってみればマシになった体調に安堵し携帯を手に取る 見れば楓から一通だけメッセージがきていた [俺は帰るな。起きたらまた連絡して。] それにすぐ既読をつけ返事をする [今起きた。昨日はほんとありがとな。] [おはよ、体調は?平気そう?] [おはよ。もうばっちりだよ。] [それならよかった。今日は家で大人しくしとけよ、また悪くなっても困るだろ。] [そうだね。まだ残ってるダンボールでもゆっくり片付けるよ。] [無理はすんなよ。夕方行くわ、そんで一緒に飯食お。] [分かった。] そう会話を終えれば目の前にまだ積まれているダンボールに手を伸ばす そのダンボールに入っていたのは漫画や雑誌等で、買っていた本棚を苦戦しながら何とか組み立てる 終われば組み立てた際に出たゴミを先に捨ててしまおうと玄関に来てからノースリーブに短パンと随分とラフな自分の格好に気付く 一瞬どうしようか迷ったけどせっかく纏めて手に持ったダンボールを再び置いて着替えに戻るのは面倒くさくてそのまま部屋を出た こんなお昼過ぎに誰にも会わないだろうと思いながらも素早く捨てに行きエレベーターに乗り込めば、「乗ります!」と慌てて走ってくる男性の姿が目に入り、急いで開のボタンを押し待っていれば「ありがとうございます。」と会釈しながら乗り込んできた男性 男性は俺より上の階のボタンを押した 軽く会釈して降りれば、そのまま部屋に戻り組み立てたばかりの本棚に収納していく 最後は何かと覗いて見ればアルバムが目に止まる 気になって床に座りページをめくれば、産まれたばかりの俺と両親の写真が1番最初に出てきた ゆっくりとめくっていけばピタリと手がとまった そこには涙目の俺と笑顔のはるにぃが手を繋いで写っている写真があって、、、 写真の横には〈引越しの挨拶に行ったら人見知りしている尚也に優しく声をかけてくれた陽斗くんと!〉母親の文字でそう書かれていた そのページからはるにぃと写った写真が増えていく ランドセルを背負って学校に行こうとしているはるにぃに抱きついて泣いている姿や、家の前で帰りを今か今かと待つ姿、一緒に昼寝をしている所。 どの写真を見ても俺の隣には はるにぃがいた、、、 写真を見たことで少し進めたと思った心は簡単に引き戻されて 「あの日写真ぐらいは撮ればよかったかな.....」 なんて後悔の声がもれる そんな時に響くインターホンの音 顔を上げれば、お昼だった空には夕焼けが広がっていた "もうそんな時間になっていたのか..." なんて思いながらモニターを見れば楓の姿 「開いてるよ」そう言えば開かれる玄関 入ってきたと思えば「お前、、、戸締りはちゃんとしとけよ。」なんて心配そうに言う 「ゴミ出しに行って忘れてた。今度から気をつける。」そう言えば「そうしてくれ。」と少し呆れたように言う楓 部屋に上がり「ダンボールは減ったか?」なんて言いながら本棚に目をやり床に置かれたアルバムに視線を移す その姿を見た俺は「つい懐かしくなって見てたら途中から片付け止まっちゃった....」と笑うように零す その言葉に「、、、そっか。」と短く、小さく言いながらアルバムを閉じる楓の表情は見えなかった

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