45 / 52
第45話
翌朝目を覚ませば、すごい寝相の2人に布団をかけ朝食の用意をする
匂いにつられたのか湊が先に起きてきて「おはよぉ」と言いながらお腹の音を鳴らした
その姿に笑いながら「顔洗ってきなよ。もう少ししたら出来るから。」と言えば「やったー」と嬉しそうに洗面所へと向かっていった
その後すぐに起きてきた亮平と3人で朝食をとり、大学へ行く用意を済ませ一緒に家を出た
学校へ着けば疲れた様子の楓と鉢合わせた
「かえで、、、」
「んっ?あぁ尚也か、、、体調は平気か?」
「うん、もう平気。あの時は病院連れてってくれたり、ありがとな。」
「気にすんな。」
そう言うと力なく笑い歩いていってしまった
すると後ろから亮平が心配そうに「凄い疲れた顔してたな....」と呟く
それに頷きながら「大丈夫かな、、、」と言えば湊が携帯を見ながら説明した
「うーん、楓のとこ昨日から大変みたい。先輩達の研究が結構注目されてて1年だろうと関係なく手伝いに駆り出されてるらしい、、、」
そう言って画面を見せてきた
それを亮平と覗き込めば記事のページで、でかでかとうちの大学名と楓の学部名
そして難しそうな文がつらつらと書かれていた
「体、、壊さなきゃいいけど、、、」
「「だね、、」」
それから1ヶ月
見事に楓とはすれ違いの生活が続いていた
深夜に帰ってきては俺が起きる前に家を出る
時には数日帰ってこない日もあった
何か力になれないかと、テーブルにおにぎりを置いておけば食べてくれていて、、、メッセージには [美味しかった。ありがとう!] と入っていた
そんな日々がさらに続いたある日、大学から帰った俺の目に飛び込んできたのはリビングのソファでぐったりとした楓の姿だった
「かえで!!」
慌てて近寄れば荒く吐く息に高揚した頬
体に触れればビックリするほど熱くて、、、
急いで体温計で測れば表示された温度は39℃
あまりの高温にパニックになった俺は母親へと電話をかけた
「もしもし尚也?どうしたの?」
「どうしよう!楓が!!!」
「楓くんがどうかしたの?落ち着いて」
「帰ってきたらぐったりしてて、、、39℃って、、」
「熱があるのね、、、大丈夫よ。落ち着いてゆっくり行動するの。分かった?」
「うん、、」
それから母親に指示を貰いながら何とかやっていく
「とりあえず少し様子を見て、熱が下がらなさそうだったら病院に連れていくのよ。」
最後にそう言われ通話を終わらせまだ少し苦しそうな楓に視線を戻す
額に浮かぶ汗を拭きながら早く良くなるようにと願った
心配で寝れずに看病をしていればうっすらと目を開けた楓に気付き声をかける
「かえで?大丈夫か?苦しくないか?」
「なお、、や?おれ、、、」
「帰ってきたら熱でぐったりしてたから、、」
「そっか、、おれ、、ごめんな、迷惑かけて」
「謝るなよ。それを言ったら俺の方がお前に迷惑かけてる事の方が多いんだから、、、」
「ふっ、それもそうだな、」
「ふふっ、いつもはそんな事ないって言うのにな」
「言った所でお前、否定するだろ?」
「まぁな。ほら、もうお喋りはいいから寝ろ。さっきより下がってはいるけど、まだ高いんだから、、、」
「わかった、」
そう言えば再び閉じられた目に聞こえてきた寝息
その間にお粥を作ろうと立ち上がればクイッと引かれる感覚
目線を下げれば楓に服を掴まれていた
寝たと思ったけど起きてたのか?そう思い「かえで?」と名前を呼べば「どこいくの、、、」と小さな声が聞こえた
「かえで?大丈夫だよ。お粥用意するからちょっとキッチン行くだけだよ」
「いらない、、、だから、ここにいて、、、」
初めてみる楓の甘えた姿に何故だが心臓が大きく跳ねた
「でも、食べなきゃ、、薬も飲まなきゃだし、、」
「いい、、はなれないで、、、」
そう言いながらまた聞こえてきた寝息
だけど俺の服は掴まれたままで、、、
"仕方ない" そう思ってもう一度座り直し楓の髪に手を伸ばした
さらさらの髪を梳かしながら寝顔を眺める
すると先程よりも穏やかな顔になったのが分かった
"いけるか、、" そう思いながらゆっくりと俺の服を掴む手を離し立ち上がる
様子を見ながらそっと動き部屋を出る
そのままキッチンへと向かい先程、事情を説明し亮平達に届けてもらったレトルトのお粥を用意する
「こんなのがあるなんて、便利だな。」なんて思いながら裏の説明を見ながら準備をしていく
その間に一緒に買ってきてもらったおにぎりを頬張り自分の食事を済ませる
出来上がったお粥をトレーに乗せ部屋に戻れば楓は目を覚ましていた
「起きてたのか?」
「さっきおきた、、」
「そっか、お粥持ってきたけど、食べれそうか?」
「、、うん、」
「よかった」
サイドテーブルにトレーを置き、少量を皿にのせて楓へ渡せばなかなか受け取らない
「やっぱ無理そう?」
そう聞けばふるふると首をふる
不思議に思っていれば「自分じゃ、むり」そんな言葉が聞こえてきた
"えっ?" そう思いながら楓の顔を見れば 「あっ」そう言いながら口を開けた
「もしかして、、俺が食べさせるの?」
そう言えばこくんと頷いた
"マジか..." と思いながらも病人だし、、、なんて言い聞かせてスプーンに少量取り冷ましてから変わらず開けたままの口に持っていく
それを口にし飲み込めば再び「あっ」と言いながら開けられる口
そんな感じで俺に食べさせて貰いながら完食した楓は満足したのか「ありがとっ」と言いながらベッドへと潜っていく
「あぁ、、、いや、ちょっと待て薬!」
そう言いながら薬と水を突き出せば「えー」と言いながら起き上がる
そのまま受け取り薬を飲み込めば「飲んだ」そう言って俺に水を手渡してきた
それを受け取りサイドテーブルへと置いた
そして食器を片付けようと立ち上がった時、また楓に服を掴まれた
「どうした?」
「どこいくの?」
「食器、、片付けようかと」
「いい、、明日俺が洗うし、、ここいてよ」
再び出た楓の甘えるような行動に戸惑っていれば「いやか?」なんて言葉が聞こえてきた
その声が何だか悲しげで、、、だから俺は「いるよ。大丈夫。」そう言っていた
それから数分、、、楓は俺の服を掴んだまま眠りに落ちた
だから、その手を離して片付けをしようとしたのに眠っているはずなのに力が強く離すことが出来ずに、気付けば俺も寝落ちてしまっていた
目が覚め起き上がれば、ベッド側で寝落ちていたはずが何故かベッドの上にいて楓の姿は見えなかった
サイドテーブルにあったはずの食器はなくなっていて、立ち上がりリビングへと向かえばカチャカチャと聞こえる音にキッチンへと目を向ける
すると楓が洗い物をしている姿が目に入った
慌てて近寄り「かえで!熱はもう大丈夫なのか!?」と声をかければ「尚也のおかげでバッチリだよ。」と笑顔を見せる
念の為、額に手を当てれば確かに昨日のような熱さはなくて、、、
それでも心配だからと洗い物がちょうど終わった楓に体温計を渡し測ってもらえば平熱で
「よかった」と安堵の息を吐けば「助かったよほんと。看病ありがとな。」と優しく言われる
それに「気にすんなよ!」と笑って返せばさらに笑う楓の姿に俺はまた "よかった" と胸をなでおろした
ともだちにシェアしよう!