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その青色に触れたい(2/4)
途端、レインズが隣で小さく息を呑んだ。
見れば、青い瞳が焦りを滲ませて俺を見つめている。
またこいつは何か思い詰めてるのか?
俺が困った顔で笑いかければ、レインズはぐいと俺の頭を抱き寄せた。
「っ、ルスっ、俺、ルスのためなら何でもするから!!」
……俺は、そんなにお前が慌てるほど、望郷の色を浮かべていただろうか?
俺がどんなに懐かしんだところで、俺の村はもう無くなってしまったし、お前を置いて帰る場所なんてどこにも無い。
「……どうした急に」
尋ねれば、レインズは俺の頭を抱いたまま、真剣な声で可愛いことを言う。
「いや、ルスが寂しそうで、つい……」
俺は小さく苦笑すると、温かな男の胸で目を閉じた。
それにしても、お前の心臓の音はいつもバクバクとうるさいな。
一緒に暮らし始めて、もう三ヶ月になるというのに。
そろそろ慣れても良いんじゃないか?
共に居る時は、こうやって頻繁に触れ合っているだろう?
俺はレインズの背に手を回す。
『何でもする』と口走った男の背を、首の裏から腰の辺りまでゆっくりと撫で回せば、時折小さく肩が揺れる。
レイのしなやかな身体が、じわりと熱を持つのが伝わってくる。
「ルス……」
俺を求めるような声で、小さく名を呼ばれて、俺は気付いた。
ああ、そうか。
俺には、もうあったな。帰る場所が。
俺よりずっと細い腰へ回した両腕に、じわりと力を込めてゆく。
「……っ」
俺の頭上で僅かに漏らされた息に、顔を上げて見れば、潤んだ青い瞳が不安げにこちらを見つめていた。
なんだその顔は。
俺は、レイを安心させるように笑いかける。
「レイ、俺はお前を置いてどこかに行ったりしない。俺は一生を、お前と共にあると誓っただろう?」
レイは俺の言葉に、必死で応えてきた。
「ルス、俺……っ、ずっと、そばに居るから……っ」
苦しげに、それしか出来ない自身を申し訳なく思っているかのように、美しい金色の眉が寄せられている。
その眉を解いてやりたくて、俺はレイの細い顎を引き寄せた。
優しく口付ければ、レイの柔らかな唇が俺を受け入れる。
俺には、お前がこうして俺に全てを許してくれるだけで、とうに身に余る程だと言うのに。
お前は常に、俺を失う事を恐れてるんだな……。
今までの経緯を思えば、それも無理の無い事か。
そうは思うものの、それでも俺は、なんとかしてこいつを安心させてやりたいと思っていた。
そっと唇を離せば、レイは寂しくてたまらないような顔で縋り付くように俺を見つめている。
俺よりも、お前が寂しいんじゃないのか?
そう思いながらも、俺はレイの青い瞳に映る自分の姿を確認しながら、ゆっくりと諭すように話した。
「俺は、もう寂しくはない。仲間も、後を任せられる後輩もいる」
レイの頬を撫でて、俺は目を細める。
「何より隣には、お前がいてくれるだろう?」
俺の言葉に、青い瞳が小さく見開かれる。
「ルス……」
恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに笑うこの男を、俺はもう一生手放せそうになかった。
「お前は本当に、可愛い奴だな」
愛しい思いを持て余しながら呟いた俺の言葉に、レイが頬を染める。
いつまでも初々しい反応を返してくるレイに、俺は苦笑しつつも、そんなところがより一層可愛いと思う。
「レイ……。お前が俺の、帰る場所だ」
耳元に口付けて、愛を込めて囁く。
「ぁ……。ルス、俺……」
レイの肩がびくりと揺れて、小さく熱い息が零れれば、つられるように俺の身体も熱を帯びた。
わざと水音を立てながら耳の中へと舌を挿し入れると、俺の背に回されていたレイの腕が、俺を求めるように力を増す。
「んんっ……う……」
耳の形を確かめるように輪郭を舐め上げて、その中を舌で撫で回し、柔らかな耳たぶを口に含んで吸い上げれば、レイはその度小さく声を漏らした。
「お前は……どこに触れても感じるんだな」
耳の中で囁けば、俺の腕の中でレイが小さく身を震わせる。
「ぅ……、ルスが……触る、か、ら……っ」
甘くねだるような声と、それでいて拗ねるような言い草が、俺を煽る。
これで無自覚なのだから、困ったものだ。
すらりとした顎のラインを指先でゆっくり撫でて、頬に口付ける。
美しいその顔に舌を這わせれば、俺の背にしがみ付くように回されていたレイの指先に力が入る。
「……っ、ぅ……」
額に、眉間に口付けると、自然と瞼が閉じられた。
その閉じられた瞼に、何だか小さく拒絶されたような気がして、俺は金色のまつ毛を舌先でなぞった。
ふるり、と小さく揺れる金色のまつ毛。
俺の三倍は生えていそうなふさふさしたまつ毛は、俺の唾液でいくつかの毛束に分かれ、余計に艶っぽい姿になっていた。
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