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襲撃6
だが男はそんな叶真の声にも臆さない。むしろ信じられないものでも見るように目を丸くさせている。
「……ちゃんと良くしてやっただろ?」
「は? てめぇ……頭沸いてんじゃねぇか」
言い逃れでなく本気で叶真がなぜ怒っているのか分からないようだ。そんな男に叶真は更に怒りを増幅させていく。
「バリタチだっつたろうが! ケツ掘られて喜ぶバリタチがいるわけねぇだろ!」
怒りにまかせて身体を起こそうとするが、重苦しい痛みを腰に感じ叶真は再び地面に倒れこむ。
「そのツラ二度と忘れねぇ……」
今ここで男を殴ることは出来なかったが、せめて憎しみを込めた目で男を射抜くように見つめ続ける。
男は叶真の憎しみを一身に受けながらも余裕な態度で衣服を整えた。叶真の憎しみなど男にとっては痛くも痒くもないようだ。それ以上にどこか楽しんでいるようにすら見える。
衣服を整えた男はゆっくり叶真に近づくと、叶真のポケットから転び出ていたスマートフォンに手を伸ばす。
「お、おいっ。なに勝手に人の弄ってんだよ」
まるで自分のものだと言わんばかりに堂々と携帯を操作する男に叶真は焦る。男が何をしようとしているのかまるで分からなかった。
叶真のスマホと男自身のスマホを操作すると、男は投げるように携帯を叶真に返す。何をしていたのか、その痕跡を探すように叶真はけだるい指でスマホを操作した。そんな叶真を揶揄するように男は言った。
「気に入ったからまた抱いてやる」
「は……はぁ?」
聞き間違いかと叶真は自分の耳を疑ったが聞き間違いではない。聞きたくもない最悪の言葉を男は確かに言い放った。
「また抱いてやるって言ったんだ。俺の気が向いたら連絡してやる」
「ってお前……まさか俺の番号……!」
登録済みだと言わんばかりに男は叶真の目の前に己のスマホを掲げる。
「勝手に登録してんじゃねぇよ! 個人情報だろうが! 今すぐに消せ!」
「ぎゃんぎゃん吼えるな。お前のスマホに俺の番号を登録してやったんだからそれで相殺だろうが」
「はぁっ? お前の番号って……」
叶真は慌ててアドレスを開く。少なくない人数が登録されているが、憎らしい男のものだからか、それはすぐに目についた。
「キョウスケ……?」
見知らぬ男の名前。それは先程までは確かに登録されていないものだった。
「抱かれたくなったらそこに連絡してこい。気分次第で抱いてやる」
「連絡なんざするわけないだろうがっ。俺の番号をすぐに消せ……っておい! 待ちやがれ、こらっ」
未だに下半身を露出した状態で地面にへたれこむ叶真とは対照的に男……キョウスケの身支度は整っていた。何事もなかったようにその場から立ち去ろうとするキョウスケに、叶真はここで逃がすものかと引きとめようとする。だが無理やり叶真を犯したキョウスケが、叶真の言葉程度で止まるわけがなかった。
それでもしつこく吼える叶真に、男は呆れながら一度だけ振り返る。
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