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不器用な愛情表現
「嫉妬して何が悪い」
あまりにも平然と言い放つキョウスケに叶真の開いた口は塞がらない。キョウスケはそんな叶真の様子に心外だと腹を立てた。
「俺はお前が気に入ったと初めて会った日に伝えただろう」
「いや……確かに言われたような気もするけどさ」
「それに俺は気に入らなければ同じ奴を二度は抱かない。自分からも連絡は取らない」
「そんなの俺は知らないっての!」
話が噛み合わない理由がようやく分かったような気がした。キョウスケはすでに叶真に告白したつもりでいる。叶真は当然それに気付かず、キョウスケをただの嫌な男として見ていた。キョウスケの図式では叶真は自分の気持ちを知っておきながら他の男と寝ようとする酷い人間なのだろう。
「いや……なんていうかあんたの愛情表現分かりにくすぎるわ……」
「どこがだ。散々イかせただろう。気に入らない相手にそんなことしない」
「あんなのほとんどの人間は愛情表現とは思わない気がするけど。っていうか俺のなにがあんたの琴線に触れたんだよ」
キョウスケがどんな男を好むのかは知らない。だが少なくとも叶真はキョウスケに友好的な態度など一つも見せていないはずだ。口を開けば悪態を付き、見た目や態度にも可愛気など一つもない。叶真ならば自分のような人間を恋人にしたいとは思わなかった。
「見た目は最初から合格ラインだ。身体の相性も悪くないし仕込みがいもある。何より俺が気に入ったのは……」
キョウスケは叶真に近づくと、叶真の細い顎をくっと持ち上げた。
「そう、このくそ生意気な目だ。どうしてお前は俺に落ちない? 今まで抱いてやって落ちなかった奴はいないのに。二度と体験出来ないような天国を見せてやって、どうしてお前は俺から離れようとするんだ」
叶真を見つめるキョウスケの目は、とても愛おしいものを見る目ではなかった。忌々しいもの、理解できないものを見る目だ。そんな感情を恋や愛と呼べるのかと叶真は疑問に思ったが、叶真に執着心を抱いているのは確かなようだ。
キョウスケの熱い視線に叶真はたまらず笑い声を漏らした。
この男に敵うものなど何一つないと思っていた。力で勝てず、男としても踏みにじられ、何をしても叶真のひとつ上を行く。
だがそうではなかった。叶真の身体はキョウスケに陥落されていたが、キョウスケの心は叶真に陥落していたのだ。
完全に負けたと思っていたキョウスケとの勝負。だが終わったわけではなかった。一勝一敗。そして勝機は叶真にある。自分がこの男に落ちるなどあるはずがなかった。
叶真の笑みの理由など考えもしないキョウスケは射抜くように見つめながら迫る。
「さっさと俺に落ちろ」
叶真はキョウスケをせせら笑いながら、冷たく言い放った。
「落とせるもんなら落としてみろよ」
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