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叶真の災難4
「マジで最悪。てめぇが手を出した男の管理くらい、てめぇがしっかりしとけよ」
「……そう言われてもな。一体いつの話なのか見当すらつかん」
「だろうな」
恭介はバリタチを犯してネコに調教するという悪癖を持っていた。叶真自身も被害者の一人だったが、それ以前にどれだけの数をその毒牙のかけたのか、恐らく恭介本人も覚えていないだろう。
「あんた、実はすげー人数に恨まれてんじゃないの」
こうしてセフレという関係に落ち着いているが、叶真も恭介を恨んだ一人だ。
「どうだろうな。お前みたいにいきなり殴られたことはないが」
「そりゃそうでしょうよ……」
恭介は昼職に就く紛れもない一般人だが、それを疑いたくなるほど、纏うオーラが危険だった。美容師をしているらしいが、裏社会の人間と言われたほうが余程しっくりくる。そんな恭介に恨みを抱いたとて、直接手を下そうという勇気ある人物は、一体どれほどいるというのだろう。叶真なら間違いなく手は出さない。もっと周りの、恭介の関係者に危害を加えようとする。
最悪の結論に叶真は眩暈を起こしそうだ。
「マジでちゃんと身辺整理しといてくんね? 身体がいくつあっても足りなそうなんだけど」
「……まあ覚えている範囲でな」
それより、と恭介は尊大な態度で腕を組む。
「お前ヤられたのか?」
叶真はうんざりと深く息を吐く。少しは申し訳なく思うなり、心配する素振りを見せるなりするといいのに、何故この男はここまで上からなのか。
「ヤられてねぇよ!」
「殴られて、馬乗りにされたのに?」
「それくらいでほいほいヤられてたまるか! んなもん倍返しにしてやったわ!」
昨夜の男は明らかに油断していた。奇襲に成功し、一方的に暴力を振るうことで、己が強いと錯覚したのだろう。抵抗されるとは露にも思わず、明らかに隙だらけだった。
恭介が相手ならまだしも、舐められたもんだなぁと叶真は思った。
叶真は非常に負けず嫌いである。そして存外気が短く、好戦的な性格だ。恭介くらい質の悪い相手でも、その好戦的な性格は発揮される。闇討ちしてくる肝の小さい男など、尚更だ。
結論を述べると、叶真は襲撃者を完膚なきまでにボッコボコにした。殴られただけならまだしも、自分を犯そうとするその考えが我慢ならなかった。正直倍返しどころか三倍返しくらいは殴っている。
「途中で泣きながら漏らしやがったから終いにしてやったけどな。全く……やり返される覚悟がないなら最初から闇討ちなんてやるなっての」
思い出すだけで怒りが沸々する。苛立ちで髪が逆立ちそうな叶真を見て、何を思ったのか恭介は突然笑い始めた。
「な、なんだよ」
この話のどこに笑うポイントがあったのだろうか。叶真は狼狽するが、恭介は楽しそうだった。
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