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SDGsでいこう 1
Freude trinken alle Wesen Anden Brüsten der Natur.
(生き物はみな、自然の恵みで生きている)
Alle Guten,alle Bösen folgen ihrer Rosenspur.
(悪人も善人もSDGsで皆幸せに)
前略、唯人さん。今日はいいニュースが二つある。まず、仕事のことーーと言ってもアルバイトだけどさ。
今どきって、単発バイト用のサイトやアプリがあって半日だけ、一日だけ日払いで働くって事ができるんだね。CMで見た事はあるんだけど、なんとなく若者向けのサービスだと思ってた。で、遅まきながら奏に色々教わってやってみたってわけ。
ただ、地方の単発バイトなんてそんなに種類がなくていい条件だとすぐ埋まってしまうし単発なので歯車感も半端ない。持続的な人間関係が面倒なクチだからそれはいいんだけど、日によって当たり外れや雰囲気が合う合わないがある。当然のことなんだが、それはそれでハローワークや家事とは別方向のストレスだ。
人間関係が楽だと思ったら、データ入力のデスクワークと聞いたのにシステムが旧式で作業量が膨大なだったり、屋内の軽作業のはずが季節外れの暑さ寒さの中だったり。
一種の日替わりガチャだと思えば自虐的に楽しめない事もない。もし接客や営業ができたら、もう少し安定した環境で食いつなげられるのかもしれないが。
できないことを考えても仕方がない。
貯金の切り崩しや姉からの援助でやっとやっていけているのは相変わらずだが、少しだけマシになった。
母が聞いたら「せっかく大学まで行かせたのに日雇いなんて!」と嘆かれそうだが、同期にはスタートから非正規だった奴も珍しくない。これまでの人生、そこそこ当たりを引いてた方だ。そもそも会社を辞めたこと自体まだ言ってないし。
階段で足をぶつけたり肩が上がらなかったり、最近、これまでの「加齢」が一気に二倍速したかのような「老い」を感じる。僕だってここにきて人生これだけハードモードなのに、あいつら一体どうしてるのかなって時々思う。
ある時、いつも買い物に行く激安スーパーの系列店で棚替え作業というのがあり、そこに行った(最寄りの店だったら行かなかったかもしれない)
そこで「普免を持っているなら、食材配達サービスのドライバーを応募しているがどうか」と勧められた。ダメもとで応募してみたら、宅配ドライバーとして採用された。勤続年数と実績によっては正社員になれるという。
配達の仕事は未経験だが販促のノルマなどはなく、決められたエリアを回ればよい。とは言え仕事だから大変な事もあるんだろうけど、しばらく頑張ってみる。
いや、頑張りたくないなーー大人にあるまじき事だが、本音を言うと奏の手前渋々頑張っている。彼が自立したら目先の事だけ考えて、アルバイトの傍ら金のかからない図書館通いでもしながら悠々自適の清貧アーリーリタイヤ生活を送りたい。
きっとそういうのは贅沢な我儘で、将来奏に迷惑かけないように体の動くうちはダブルワークをしてでも介護施設に入る資金を稼ぐべきなんだろう。
若い時のように「やりがいがあって高収入で」なんて甘い夢はもう見ていない。いや、「人間関係が良好で福利厚生が充実して」だったかな。とにかく、人生もハーフタイムを終えて後半戦に突入して、噛み終わりのガムのように甘みも辛味もないが残りどれだけあるかわからない貴重なアディショナルタイムだ。それをただ生活費を稼ぐだけの仕事に追われて過ごすのはやっぱり辛い。
世界には戦争や弾圧で、若くして明日どうなるかわからない人達がいる。平和で民主主義で一応まだ経済大国のはずの日本の僕らは、いつどうなるかわからない老後のために、いくつになっても働き続ける。
だが考えてみたら、他の生き物だって餌の調達と繁殖と子育てと……ひたすら生きることだけに追われて一生を終える。それを受け入て淡々とこなすことができる人とそうでない人がいるってだけなのかもしれない。
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