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喜びよ!ふたたび 5

「おまわりさんだ!」アカリちゃんは大喜びだが警官はにこりともせず不機嫌そうな顔で僕に聞いた。 「この子は?あなたのお子さん?」「いいえ」  僕はヒヤリとしたーーそうだ。チャイルドシートがないので違反になるんじゃないか。  警官は今度はアカリちゃんに聞いた。 「お名前は?」「ちぎらあかり」  警官はますます顔をしかめた。 「アカリちゃんだね。この人は君のお父さん?」「違うよ」  違反点数いくつだったっけ、バイトに影響あるかなあ……などと僕はあれこれ考えて焦っていた。目が泳いでずいぶん不審人物風に見えたことだろう。 「ねえおまわりさん、なにしてるの?」  アカリちゃんはお行儀よく座ったまま、足をバタバタさせた。 「お仕事だよ。免許証拝見させてください」 「あっはい」  警官は僕の免許証を確認すると、 「ちょっとお時間いいですかね」  と、言葉は丁寧ながら高圧的な口調で言った。 「いや、でもあの、ええと、僕はただ……」  チャイルドシート非使用って今、罰金取られるんだっけ?とか走り出す前だし違反にはならないんじゃないか?と色んな考えが駆け巡った。せめてチギラさんと連絡取れてからにしてもらいたいが、国家権力相手に交渉事ができる胆力があったらそれこそ、こんな所で燻ってない(たぶん) 「お話し伺わせてください」  ほぼ頭ごなしに怒鳴るような口調で言われ、僕はすっかり萎縮してしまった。もちろんここで「所属と階級と名前は?」と逆質問する度胸はない。 「おまわりさーん、スナオをおこらないであげてー。かわいそう」 「ええと、怒ったんじゃなくてね……アカリちゃん、この人知ってる人?」  警官の態度が少し軟化した。小学校低学年に国家権力からかばわれる僕って一体…… 「うんっ。おーたんのお友だち。おーたんが迷子になっちゃったから、いっしょにさがしてくれてるの」 「……詳しく教えてもらってもいいかな?」  時間はかかったが、なんとか事情を理解してもらい希望どおり文化センターに連行(?)される事になった。アカリちゃんはパトカーに乗ることができて、単純に喜んでいた。  数分もしないうちに文化センターに着いた。建物はもう真っ暗で駐車場の街灯だけが点いていた。だが、赤色灯をつけたパトカーが停まっていて灯りを手にした人たちがその辺を歩き回っているのわかった。 「やっぱり車上荒らし……?」と驚いたが、アカリちゃんはのんきに「ここにもパトカーだ!」と喜んだ。  僕達を連れて来た警官はパトカーを停めて同僚に何やら話しかけ、僕達が解放(?されたのと)懐中電灯や誘導灯を手にした人達が集まって来たのが同時だった。 「アカリちゃん!」 「がっしょうだんのせんせー」  真っ先に駆けつけて来た畝川先生にアカリちゃんが駆け寄った。 「ああ、よかったよかった」 「チギラ君とは連絡ついたのか」 「一体どこにいたんですか」 「運転中みたいです」 「はい。最寄りのコンビニで、こちらの団員の方が保護してくださってまして」 (んん?最初ずいぶんと『逮捕しちゃうだんべ!』な対応じゃなかった?) 「メッセージは入れておいたんですけど」 「親御さんには帰宅した場合のために自宅で待機をお願いしました」 「行き違いにならないといいが」 「いやあ、無事で何より」「外に出てる捜索隊にも連絡して」 「アカリちゃん、もう迷子になっちゃダメよ」 「藤崎君、お手柄だったなあ」「いや、そんなこ」「迷子はおーたんだよう」「あっはっは、こりゃ敵わねえや」 「ところで一体、何があっ」 「ですので、こちらで連絡を入れてこのままお送りします」 「だからさ、アカリちゃんは見つかったの。うん、そう。いや、俺らは文化センターいるけどさ、現地解散でいいよ」 「女性陣は志塚さん以外帰ってもらったんだろ」「行き違いになりませんか」 「そこは大丈夫です。それでは皆様、お疲れ様でした」 「お巡りさん、ありがとうございます」 「いや本当、無事でよかった」「アカリちゃん。おやすみ」「気をつけてね。またね」「ばいばーい」「僕帰るよ」「先生もお疲れ様です」「俺らも帰るべえ」「天気が悪くなる前に見つかって何よりだい」 「いやだからさ、こっち来てくれても誰もいないんだって。遅いし、みんなもう帰るから」  ややカオスな大団円の空気の中、アカリちゃんは皆の衆に見送られるプリンセスのように笑顔でお手振りしながらパトカーで帰宅した。 「きゃっ」「どした」「今遠くで稲光が」  まさかアカリちゃんの失踪騒ぎが起きてたなんて。あれ?でも今日、二人ともこっちには来てなかったんじゃ?まあ、役に立ててよかっ……って、んん?  その頃までに乱気流のような風が不規則な吹き、天候急変の兆しがあったのだがバラバラと大粒の雨が降り出したので全員、挨拶もそこそこに一目散に自分の車に乗って帰ってしまった。  駐車場には僕一人ーーって、ええっ?

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