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第3話*
「んっ、先生……。お肉を焼きませんと」
「お前さんを料 るのが先だよ」
舟而 はそう言うと耳へ接吻し、背後から左腕を白帆 の腰に回したまま、右手を着物の合わせ目へ滑り込ませて胸の粒を探り当て、指先で優しくくすぐる。
「あっ、先生ったら……」
白帆は窘めるような声を出しつつ、舟而の手に自分の手を重ね、舟而の肩に後頭部を預けて目を閉じた。舟而が手を動かすたび、白帆は呼応して身体を震わせ、澄んだ甘い声を上げて、さながら腕の中に抱えたマンドリンを奏でているかのようだった。
「いい心地かい?」
舟而がからかうように耳へ囁くと、白帆は俯いた。
「…………もうっ。私の調理法なんて、全部ご存知じゃありませんか」
「そうかい? 全部なんてご存知じゃないよ。意地悪を言わないで、もっと教えておくれ」
舟而が頬への接吻を繰り返すと、白帆がゆっくり振り返った。二人は目を細め合って、互いの唇を啄み、口を開けて舌を与え合いながら奪い合う。
絡む舌のぬめりに、舟而はまた白百合の雌蕊 を思い出す。白帆の清くも甘い姿に誘われて抱き着き、舌を吸ってもぞもぞと手を動かす自分は、さながら蜜を吸い身体を蠢かせて花粉をなすりつける虫のようだと思う。
舟而は布越しに猛りを押し付けて白帆を煽った。
「んっ、ああ、硬い……っ」
白帆は逃げるどころか舟而の腰へ手を回し、自分の柔らかな尻を突き出して、恥じらいながらも擦りつけてくる。
「ああ、先生。もっとくださいまし……」
「そんなに急かすと、お前さんが生煮えのうちに食べてしまうよ」
言いながら、さらに強く押し付け、狭間に沿わせてゆっくり大きく上下に擦りつけてやると、白帆は顎を上げて泣きそうな声を出す。
「もう……、生煮えなんかじゃありません……」
「そうかい、じゃあ遠慮なく頂くよ」
白帆を流しの縁に掴まらせ、白い太腿を撫でながら着物の裾を捲り上げる。
「滑らかな肌だ……」
白帆の肌は上質な陶器のようにしっとりと舟而の手に吸い付いてくる。夢中になって撫でまわすうちに、白帆の呼吸はますます速くなり、甘く湿った声が切なく響く。
「お願いです、せん……せい……」
舟而は白帆の頬や首筋に接吻してあやしながら、慣れた手つきで下帯を取り去り、菊の蕾にとろりと香油を塗り込んで指先を埋めた。
「あっ、せんせ……っ」
舟而が指を蠢かせると白帆は仰け反り、白い喉を晒す。
「あ、あっ、もう、もう……。先生っ」
「もう、何だい?」
舟而は白帆の悩まし気な顔を見て片頬を上げ、さらに承知している場所を指の腹で撫でる。
「ああっ、ンっ、もう、もう。気を遣ってしまいます……っ」
「せっかちだな、白帆は」
白帆の耳元でくすくすと笑って聞かせながら、舟而はさらに指を増やして追い上げる。白帆は爪先立ちになって震えていた。
「許してあげるよ。我慢しないでいつでも気を遣りなさい」
「ああ、先生っ。……あ、あああっ、はああああんっ!」
白帆は舟而の指を締め付けながら全身を硬直させた。白帆が極まる姿は、雲間から差す光のように美しかった。
舟而は白帆の姿に暫し見惚れてから指を引き抜き、入れ違いにズボンの前立てから引きずり出した自身の猛りを押し込んだ。
「ああっ! 先生っ!」
伸び上がって逃げる白帆の身体を抱えて引き寄せ、根元まで含ませる。
「ああああっ」
狂乱したように黒髪を振る白帆の萎縮している男を、香油に塗 れた手に包んで撫で回した。
「せんせっ、しないで。そんなに、しないで、くださいまし……っ」
「本当に嫌かい?」
尖り始めた白帆の分身を証拠とばかりに扱き、白帆は首を左右に振る。
「いい子だね。お前さんは素直なのが取り柄なんだから、変な見栄なんか張るんじゃないよ」
「はい、先生……」
白い尻を突き出し、目元を赤く染めて振り返った姿に、舟而は激しく劣情を刺激された。
「白帆っ!」
舟而は白帆を強く抱き締めると、一気に猛攻を仕掛けた。
「あああああっ!」
深く貫いて、夢中になって粘膜を擦り合わせる。攻めているつもりが絡め捕られて、二人は夕餉の匂いが漂う土間に立ったまま、遂げることだけを望んで汗を垂らし、口づけを交わし、金魚のように喘いで、身体を揺する。
「もう……っ、せんせっ」
白帆の言葉に舟而は頷き、限界まで律動を強めた。
「はあんっ、ああーっ!」
「くっ、はあっ、白帆っ!」
二人は打ち上げられた魚 のように身体を震わせ、数回に分けて白濁を放出した。
霞の中にあった意識が晴れやかになると、二人はべたつく額をくっつけて、悪戯に成功した子供のように肩を揺すって笑いあった。
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