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ねえどう思う?

 呟いた柚弥の頭が、机の上で丸まった腕の中に落ちた。 「どうして……」  気掛かりそうに訊ねる椋田の声に、柚弥は顔を横に傾けて答える。 「わっかんない。昨日までは全然普通に喋ってくれたのに、今日来たら、もう駄目だったんだよねえー……。もう俺の存在、全然受け付けないって感じで」 「何か、思い当たることはないのか」 「ええー、ないよお。昨日別れた時は普通だったし。……強いて言えば、喋り過ぎ? やっぱ俺の喋り過ぎ? 家帰って落ち着いたら、もうあいつ、いきなり授業中寝るし!? ちょっとうるさ過ぎて、僕授業集中出来ないんだけど! みたいな。……そんなキャラじゃないな」 「何だって? 寝たって?」 「あ、いや、ちょっと……。後はもう、やっぱ俺の顔が、性悪過ぎて無理とか? だって裕都君、顔も普通にかっこよくて、いかにも優しそうな、綺麗な目して、俺みたいな底意地の悪い顔と違くてさあ。ねえーどう思う? やっぱ俺の顔がきっついから?」 「……何とも言えないな。どこまで喋り過ぎなのかも、その子のこともまだ見てないし……。 顔はまあ、違うんじゃないのか……。というか、何寝てるんだよ……」 「寝たのはごめんー。でも仲良くしたくて、いっぱい喋っちゃったんだもん……」  はあー、と嘆くように息を吐きながら、伸ばした腕の上で柚弥は自分の頭をごろごろと転がした。  それがふと、転がりを止めると、窓辺の向こうを見つめながら、何かに思いを巡らせたように、口の中で呟いた。 「——…………まさかね」  それを聞き逃さなかった椋田が、柚弥の表情を見直そうとする。 「…………やっぱり、何かあるんじゃないのか」  柚弥は頭を起こし、椋田の視線から避けるように小刻みに首を振った。  視線を合わせようとしない。完全に親に隠し事をしている子供の(てい)だ。  おそらく何か別で疾しいことがあるらしいのを椋田は察したが、そこは何故か嫌な予感もして追求はしなかった。  頭を起こしたが、頬杖をついて視線を窓に向けたままの柚弥に椋田は腕組みをしてあきらかな溜息をつく。 「…………で、聞いたのか。その、避けられた理由」 「……聞いてない」 「えっ?」 「聞いてないよ。だって、もう拒否られたのきつくって、隣だし、耐えられないからとりあえずここ、来ちゃった……」 「何やってるんだよ、聞かないでここ来ても、意味ないだろ……。ええと名前、何だっけその子の……」 「松原君。裕都(ひろと)君」 「その松原だって困るんだろ。そんなに話し掛けおきながら急にいなくなったら……。 さっき、言ってただろ。久しぶりにいい友達が出来るかもしれないって。——それなのに、逃げて来たのか」 「…………だって」 「正直、聞いてて少し驚いてたんだよ。橘にそんな、同じ年頃で仲良くしたい子が出来たっていうのが。 今まであまり、深く関わろうとしてこなかっただろ。友達とか、クラスメイトとか、そういった存在に……」 「……」 「実際のところそこは、どう思っていたんだろうな…………」

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