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ブラック校長よありがとう!!

『はい、ではここまでで誰か質問のある人はいますかぁ〜?』 萌え袖に指し棒を持って黒板を差しながら、生徒に向けて笑顔を振りまく花ちゃん先生。 ……授業の空いた時間には、誰もいない数学準備室(横領の件で校長を脅迫して作らせた部屋だ)で花ちゃん先生の授業風景を眺めるのが俺の日課だ。 各クラス&化学室に張り巡らした盗撮カメラのデータは全て俺のスマホに繋いであり、随時視聴できるよう保存してあるのだ。 『はいっ!』 スマホの画面の中で、女生徒が手を挙げた。アイツは確か、花ちゃん先生ファンクラブのひとりだったかな。 『はい、藻部野(モブノ)さん』 『花ちゃん先生には彼氏はいるんですか!?』 藻部野、そこは嘘でもいいから彼女と聞け。 キサマが腐女子くてごめんなのは知っているがムダに己の性癖をダダ漏らすな。 しかしそれは俺も聞きたかった質問だから今回は許す、グッジョブだ藻部野!! 『やだなぁ、いませんよそんな人ぉ』 花ちゃん先生は答えなくていいような質問に答えて恥ずかしそうに頭を掻いた。 ああもう、いちいち可愛い!! 『ええー、そうなんですかぁ? じゃあー、好きな人は?』 『えっ!? ……っとそれは……い、いませんよ、いませんっ!』 花ちゃん先生は、嘘をつくのが超下手だ。 みろ、生徒は全員にやけ顔だ。 花ちゃん先生を狙う男子生徒は多い。不用意にそんな顔しないで! っていうか好きな人ってだれェェエ!? 『あーっ!いるんだ!誰ですか誰ですかー!?教えてくださいよぉ!』 いいぞ藻部野、もっとやれ! 『も、もうっ、教師をからかうんじゃありませんっ! じゅ、授業再開しますよっ!』 『え〜? つまんなーい』 ほんとそれな。 しかしこれはゆゆしき事態だ。 今まで以上に、より厳重に花ちゃん先生の身辺警護(ストーキング)をしなくては。 ◇◇ ……というわけで、業務終了と同時に秒で帰宅した俺はチャリンコをぶっ飛ばし、学校に戻ってチャリンコを停めた。 それからその辺の木の枝をもぎって両手に持ち、物陰に隠れて花ちゃん先生の退勤を待つ。 徒歩で通勤している花ちゃん先生は、今日も重そうな鞄を下げて校門を出た。 その後を、あちこちの看板やら塀の陰に隠れながらついていく。 身辺警護も楽ではないのだ。 けど超楽しい。 たまに子供がこっちの方を見てポカンとして、そばにいた母親が子供の目を隠しそそくさと逃げていく時がある。どこかに不審者でもいたのだろうか、物騒な世の中になったものだ。 両手に持った木の枝で街路樹に混じり、花ちゃん先生の(ケツ)をつけまわしていると、その体がふいに、ぐらりと揺らいだ。 「!!」 大変ありがたいことに花ちゃん先生は体が超弱い。 そこに加えてブラック校長が2教科担当の激務を押し付けてくるのだから、ちょいちょい体調を崩して倒れてくれるのだ。 あれはたぶん貧血だ。校長よありがとう!! 俺はすかさず木の枝を投げ捨て、ダッシュで花ちゃん先生の脇に滑り込んで倒れる一歩手前のところを抱き止めた。 「……っ、ゆ、弓削先生!? どうして……」 「別に、ちょっと通りかかっただけです」 「え、でも弓削先生、確か車通勤では……」 ふらぁ、と傾くその体を横抱きに抱いて持ち上げる。 「……弓削先生、頭に葉っぱがたくさん付いてますけど……?」 うつらうつらとしていて、もはや失神寸前だ。 「お構いなく。このまま家に連れてきますから」 「は……、はい……」 キュッと俺のスーツの襟を握りしめたかと思うと、今度こそ瞼が閉じた。 ……なんだか顔が赤いな。熱があるのか? よし今夜は『作りすぎましたてへぺろ☆』なノリで、お粥でもお裾分けしてみるか。 第2話おわり・:*

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