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メイド服で撮影会〔前編〕

唐突だが今日は文化祭だ。 俺が担任する2年A組のやつらはこういうとき大変ズル賢く、おでん屋をやると決めた。 なぜおでん屋がズル賢いかというと、まずおでん屋は手間がかからない。 デカい鍋とガスコンロさえあれば、あとは出来合いのおでんをボトボト投入すればいいし、味もついているから温めるだけで完成だ。 人手も売り子とウェイトレスの常時2人いれば充分だから、15分交代でシフトを回せばその他の時間はみな遊び放題というわけだ。 ゆえに担任の俺も遊び放題だ。 まことに良いクラスを持ったものである。 花ちゃん先生が担任する3年C組は喫茶店をやると言っていたから、巡回のフリして覗いていこう。 こういうのはキホン教師はノータッチだから、あわよくばご一緒に巡回したいものである。 『今年も盛り上がって良かったですね! あっゴホゴホッ、すみません持病のシャクが……』 『それはいけない、どこかで二人きりで休憩でもしませんか』 『えっ……(ポッ)』 など想像を膨らませているうちに着いた。 うん……? やけに長蛇の列だな。 喫茶店が人気なのは分かるが、こんなに混むものだろうか。列は男女半々くらいの割合で、たまに教師も混じっている。 気になって歩いていくと小さな特設ステージが見えてきた。 「なっ……!!」 ステージの上には、なんとアリス風メイド服を着せられた花ちゃん先生が引きつった笑顔でピースサインを決めていた。 その隣には鼻の下を伸ばした他校の男子生徒がいる。 かぁわぁいいいいいいい!! 足キレ──イ!!! あんど隣のやつはブチ殺すうううう!! いやそうじゃねえええ!! 『花ちゃん先生と♡チェキ1回600円』 やたら生々しい金額の立て札まである。 しかも、 「はいはーい! うちのクラスの喫茶店で三品ご注文いただくにつき、チェキの整理券1枚を配布しておりまーす!」 というあこぎさだ。 二重搾取とは考えたな、3Cのやつら頭いいな。 ヤバい、死ぬほど可愛い。あの格好のままお持ち帰りしたい。 というか押し倒したい。 「ちょ、はなちゃ……乙花先生、なにやってるんですか!」 ほぼイメクラですよ、とは言えない。 そして放ってもおけない。

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