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第4話 抱いたら嫌いになった?

(一度試しに抱いてみたら、僕のことが嫌になったのかな……)  シグルドとの最初で最後の契りを交わした夜、そういうことの経験も知識もまったくなかったリオルは、最初は緊張しっぱなし、その後もシグルドから与えられる快感に歓喜の涙を流して、ただ酔いしれていただけだった。  つまりシグルドに対してリオルは何もしなかった。  本当はもっと旦那様に性的な奉仕をしなければならなかったのだろう。あれではリオルはよくてもシグルドにしてみればつまらなかったに違いない。  夫夫になる前にもっとそういう営みの勉強をしておけばよかった。そうしていれば、シグルドは今でも最低限の夜の相手くらいはしてくれたかもしれない。  あの夜を最後に、シグルドは一度もリオルを抱いていない。  ひとつ屋根の下で暮らしているのに、シグルドとの距離は開くばかり。  シグルドも仕事を終え、せっかく家に帰って来たのにこんな真っ黒な髪で黒い瞳の陰気くさい妻がいる家なんて安心してくつろげないだろう。  いっそ別居婚のほうがよいのではないかという考えがよぎるが、実家からは『子どもを孕んでフォーデン家から金をもらうまでは帰ってくるな』という主旨の手紙を何度も送りつけられている。  オメガのリオルにはなんの能力もなく、ひとりでは生きていけない。シグルドには申し訳ないが、リオルが暮らす家はここしかなかった。  これは完全なる政略結婚だ。  でも、リオルは最初シグルドとの婚約話を聞いたとき、飛び上がるくらいに嬉しかった。  なぜなら、リオルが幼い頃から慕っていた相手がシグルドだったからだ。  離れ離れになっても尚、遠くからシグルドに憧れの眼差しを向け、シグルドの活躍の噂を聞けば自分のことのように嬉しく思った。  だから二つ返事でシグルドとの結婚話を受けたし、それによってハーランド家まで助かるとはなんと素晴らしいことかと浮かれていた。  いざ結婚して、シグルドと新居に暮らすことになり思い知る。  好きな人と結婚できたと喜んでいたのは自分だけで、シグルドは冷めていた。それもそのはず、シグルドにとって、これは愛のない政略結婚だったのだから。

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