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第19話 シグルドの想い
「リオル。愛してる。誰よりも愛しているんだ。ずっと、ずっと前からリオルのことが好きだった」
シグルドとふたり、ベッドの上に座り、オメガの愛の巣に半分身を埋めながら、
今まではシグルドに「愛してる」と言われても信じられなかった。でもなぜだろう。今のシグルドの言葉はスッと心に響いて、リオルの胸のよどみを取り払っていく。
「リオルにとっては俺との結婚は政略結婚なんだろうが、俺はリオルと結婚できると知って嬉しくて、即座に了承したんだ。だってリオルは俺の初恋の相手なんだからな」
「えっ? まさか……」
リオルもそうだ。政略結婚の相手がシグルドのだと聞いて喜び勇んで結婚を快諾した。まさかシグルドも同じ気持ちでいるとは夢にも思わなかった。
「初めて会ったときから惹かれてた。あんなに一緒にいたのに、俺たちはアルファとオメガだから、十二歳になったときクラスも別々になり離されてしまった。それでもリオルになんとかして会いたくて、ある日俺はオメガのクラスに密かに侵入したんだ」
「シグルドが、そんなことをしたのっ?」
アルファがオメガのクラスにいるところを教師に見つかったら一発で退学になる。そんな危険を犯してまでリオルに会おうとしてくれていたとはまったく知らなかった。
「そうだ。たったひと言でもいいからリオルの声が聞きたかった。でも、そこにリオルはいなかったんだ。学校を辞めたって聞いて、俺は愕然とした」
「それは……学費を払えなくなって辞めざるをえなかったんだ」
「ああ、後から知った。諦めの悪い俺は、今度はリオルの住んでいた屋敷に行った。そうしたらリオルはその屋敷にもいなくて、家族で引っ越したと聞いて驚いた」
「お金がなくて、狭い屋敷に移ったんだよ……」
シグルドが追いかけて来ていることなど知らなかった。学校でのシグルドの活躍はめざましく、学内での人気はナンバーワン。リオルなど手の届かない、すっかり遠い雲の上の存在になってしまったとばかり思っていた。
そんなシグルドがリオルのことをずっと気にかけてくれていたなんて。
「俺に最後の挨拶もないまま、いなくなるなんてリオルはひどい。俺のことなど忘れてしまったんだろう?」
「違うよ。忘れるわけがない。引っ越しも夜逃げみたいな感じで、僕だってシグルドに会いたかったのに、そんな機会はもらえなかったから……」
リオルが言い訳がましいことを言うと、シグルドは「リオルも俺に会いたいと思ってくれてたのか?」と目を見開いた。
シグルドは昔のことを憶えてくれていて、離れ離れになってからも、リオルを想ってくれていたのだ。
この結婚は、政略結婚だったけれど、お互いの気持ちは本物だったということなのだろうか。
「じゃあ、どうして、どうしてシグルドはヒートのときにそばにいてくれなかったの……?」
結婚してから三回もヒートの期間があった。そのどれも都合が悪かったとは思えない。シグルドは意図的にヒートのとき、リオルを避けている様子だった。
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