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第10話
日が暮れた頃にアドルフが戻ってきたが、なぜかたくさんの食料と日用品を抱えていて、目を丸くした。
「どうしたの、それ?」
「第二王子でも王子なんじゃな。助けたと言ったら褒美をたらふく貰ったぞ」
「ジンは大丈夫だった?」
「城に着く頃に目を覚ました。少し休めばすぐ魔力は戻るだろう」
大事にならずに済んでよかったと胸を撫で下ろした。
抱き締められた力強さがふと蘇る。 ルイスより小さかったのにいつのまにか背を抜かれ、身体つきが逞しくなった。もうルイスがそばにいなくても一人 で立派にやっていけるかもしれない。
けれど「俺の幸せはルイスがそばにいることだ」と言ってくれた。
「僕も一 緒にいたい」と言えたらどうなっていただろうか。
「魔法学園に行くのか?」
「魔力がないのに行けないよ。それに忌み子だとまた言われたら」
ジンの命よりも自分の心を優先してしまった弱いルイスには現実と向き合うだけの強さがない。
アドルフはルイスの頭をやさしく撫でた。
「あと六年もある。それまでここでゆっくり考えるといい」
「でもこれ以上アドルフに迷惑かけられないよ」
「なら我の話し相手をしてくれんか。 長い間ずっと一人で寂しくてのぅ」
そう言ってアドルフは泣く真似事をした。ルイスに気を使わせないように してくれているのだろう。
そのやさしさに心が軽くなる。
「じゃあそうしようかな」
「ありがとう、さて夕餉の支度をし ようか」
いまはまだもう少しだけ時間が欲しい。弱 い自分と向き合うためにも。
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