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第17話
翌朝、朝日がのぼるまえに目が覚めた。小屋に住んでいたときは起きてすぐ湖に水を汲みに行ったり、朝ご飯の用意をしていた。
そして洗濯、掃除が終わると昼ご飯を食べてアドルフから勉強を教わり、夕ご飯、風呂を済ませ日が沈むと眠りにつく。
そうやって規則正しい生活をしてきたせいか学園に来ても癖が抜けない。
学園では食堂に行けば食事ができる。
ありがたい環境だが、この時間ではまだ開いていない。
お腹が空いているが風呂に入っていないことを思い出して慌てて浴室に向かう。
長い髪を乾かし制服に着替えてもまだ時間は余る。一般棟まで遠いから早めに向かおうと扉を開けると応接室のソファでジンが書類を読んでいた。
「おはようございます、ジン様」
「おはよう」
側付きのクアンはまだ来ていないらしい。 邪魔をしないように扉へ向かうとジンが声をかけてきた。
「ルイ、と言ったな」
「はい」
「アドルフとは昔からの友人なのか」
「そうですけど」
「ではルイス・カーティという男は知っているか?」
探るような赤い瞳に背中に冷たいものが伝う。口の中の水分が蒸発して喉が渇く。空気を求めるように息を深く吸い込んだ。
「……存じ上げません」
「そうか。君のように夏の青空みたいな瞳をして、金糸のような艷やかな金髪でとても愛らしい男なんだが」
ルイスのイメージがなにやら随分と変わっている。いつもボサボサの髪だし愛らしいってなんだよ、内心突っ込む。
だがジンが縋るような顔をしていて言葉に詰まった。
(どうしてそんなに僕に会いたいんだろう)
貴族でないただの平民のルイスは縁あって幼少期の少しの間だけ過ごさせてもらえただけ。王族のジンにとってなんの得にもならない。
むしろジンの立場を悪くさせる忌み子だ。
絶対に正体を悟られないようにしないと。
それがジンのためだと言い聞かせ、早鐘を打つ心臓に手を当てた。
「お力になれず申し訳ありません」
「そうか。すまない」
「いえ、では失礼します」
一礼して部屋を出た。膝が笑っていてもう立てそうもなく、ずるずると床 に座り込む。 嘘を吐いている後ろめたさにしばらく立ち上がれなかった。
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