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第33話
慌ただしい声と人の気配に意識が浮上する。なんだろう。なにかあったのだろうか。
「ルイス! 死なないでくれ、ルイス!」
何度も名前を呼ばれ、薄っすらと瞼を開けた。赤い色の実? いや、違う。ルビーのような瞳だ。
この瞳を持っているのは一人しか知らない。
(ジン、どうしたの?)
また母親やレナードに辛く当たられたのだろうか。
慰めてあげたいのに喉がカラカラで乾いた空気だけが漏れる。手を伸ばして頬に触れると熱く、重ねられたジンの手は大きく逞しい。
いつの間にこんなに大きくなったのだろう。
「竜よ、ルイスを連れて行かないでくれ」
震える声で竜神に懇願している。どうしてそこで自分の名前を呼ばれるのだろう。うつらうつらしていると視界のはしにアドルフの姿があった。
ベッドに寝かせられているとこのときになってようやく気づいた。
「薬が効いておる。まだ意識は混濁しているようだが、じきにちゃんと目を覚ます」
「じきにっていつだ?」
「明日か明後日くらいかの」
「そんな」
「大丈夫じゃ。少量しか口にしておらん。すぐに吐き出したようだし命に別状はないぞ」
「だが」
アドルフがジンを窘めても納得できていないようだった。
また意識が沈む。
重たくて抗えない。
瞼を閉じると唇に温かいものが触れた気がした。
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