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第36話

 「いつ、どこで、そんな話をしたん だ!」  目くじらをたてるジンをアドルフが宥めているが、髪を振り乱し怒りに震えている。  「祭りのちょっと前。ただ僕のことをすごく調べてたみたいで」  「どうしてそれをすぐに言わない?」  「……僕だってバレたらジンのそばにいられなくなるかもって」   肩を落として項垂れると今度はアドルフはルイスの背中を撫でて慰めてくれる。  「あっちこっちと忙しい奴らじゃの。痴情の縺れってやつは面倒じゃ」  「そういうのじゃ」  「お互いを大切に想うからこそのすれ違いじゃろ。これだから人間は面白い」  クツクツと笑うアドルフに毒気を抜かれたのかジンはすぐに冷静になった。  「それより闇の魔力の方が気がかりだ」  「誰が持っているかということだよね」  ジンは小さく頷いた。  「所有者がわかれば俺の命を狙っている奴もわかる」  「でもどこで闇の魔力を手に入れる方法を知ったんだろう」  ルイスがおとぎ話ように聞いていた話だと特別な儀式が必要らしいということだった。儀式の内容までは伝えられていない。  「城の地下深い書庫に闇の魔力について書かれた本がある。だがそこに誰かが入った形跡はないらしい」  「ということは他にも資料があったってこと?」  「あまり考えたくはないがな」  そう言ってジンはバスタオルをルイスの頭にかぶせた。髪はもうすっかり乾いている。  「闇の魔力って一度かけられたら解くことはできないの?」  「光の魔力がないと無理じゃな」  「光の魔力?」  アドルフの言葉に驚いてオウム返しをした。そんな魔力は聞いたことがない。  「闇の魔力に打ち勝つ唯一の魔力じゃ。得られる方法は竜からの寵愛」  「竜から愛されればいいということか」  「でもどうやって」  ジンと顔を見合わせて首を傾げた。  ただでさえ三百年以上、竜は人の前に姿を現していない。それなのにどうやって寵愛を受けろというのだろうか。  それに寵愛とはどういう意味なのか。  わからないことだらけだ。  答えを知っているであろうとアドルフに視線を向けると、やれやれと言った様子で肩を落としている。  「詳しいことはよくわからん。だが光の魔力があるのは事実じゃ」  「そっか。じゃあこっちも調べなきゃね」  考えなければならないことが山積だった。 ジンの命にを狙っている者、闇の魔力のこと、光の魔力のこと。  そして忌み子のこと。  (僕もなにか力になれたら)   魔力がなくてもジンを護りたい。薬草のことももっと勉強して、もしものときに備えておこう。  「いまここで話し合っても答えはでんな。我も調べてみる。ルイスの元気な顔が見られてよかった」  「ありがとう、アドルフ」  そう言い残すとアドルフは部屋を出て行ってしまった。  「考えることや調べることがたくさんあるね」  「あぁ、とりあえず城も調べさせる」  そう言ってジンは魔法具を取り出し、誰かに連絡をした。  「明後日には城に戻る」  「今日はいいの? まだ昼過ぎだし、急げは夕刻までに帰れるでしょ」  「いまはルイスと一緒にいたい」   背中を上下に撫でられ、ぞわりと震えた。  布一枚しか隔てていないのにジンの体温の高さがわかる。  「ルイス」   名前を呼ばれただけなのに、引き寄せられるように顔を近づける。  唇の柔 らかさに目眩を起こしそうになった。  「いますぐルイスが欲しい」  「そ、それって」  言葉が意味していることがわかり、頬が熱くなった。 命を狙われている危険があるとわかっているからだろうか。  ジンのすべてを自分のものにしていないと胸を掻き むしりたくなるほどの不安に駆られる。  「いいか?」  「……僕も、したい」  そう返すとまたキスをされた。今度は舌の根元を吸って深く交わり、唾液が垂れて首筋を伝う。  呼吸がうまくできない。  けれどやめたくない。苦しい。好き。  夢中になって舌を絡めているとジンは名残惜しそうに離し、垂れた涎を舌ですくう。  首筋を滑られて肌があわだつ。耐えるようにシャツを握るとジンはひょいとルイスを横抱きにした。  いわゆるお姫様抱っこというやつだ。  「待って、恥ずかしい」  「俺たちしかいないからいいだろ」  抱っこされながらもキスをされ、降ろされた先はジンのベッドだった。  柔らかいスプリングと肌触りのいいシルクのシーツに包まれた。上に覆いかぶさったジンは太陽を背にしているせいか顔が影に入る。    その表情は切羽 詰まっていて、ルイスが欲しくて堪らないと切望していた。  ルイスのボタンを丁寧に外しながら、身体中にキスをされ、喉仏に歯をたてられただけで甘ったるい声が漏れる。  なんでこんな声の出し方を知っているのだろう。好きな人に触れられると愛されたくて勝手に出てしまうのだろうか。  丁寧な愛撫をほどこされて、思考までもドロドロに溶かされる。  ジンが起き上がり乱暴にシャツを脱いだ。逞しい体躯が露わになる。  腹筋も腕の筋肉も鍛え上げられた雄でごく んと唾を飲み込んだ。  シャツをたくし上げられ、下着をするすると脱がされる。眼前にさらされた屹立は固くなっていた。  「興奮してるのか?」  「訊かないでよ……ジンは?」  「俺はほら」  両足を広げられ、まるで挿入しているようなリアルさで腰を押しつけられた。  「へっ、わっ、あっ」  あまりの大きさと熱さに素っ頓狂な声があがってしまう。  ぐりぐりと性器をさらに奥へ進めようとされ、腰が引けてしまう。  (こんな大きなものが僕の中に入るの?)  自分のとは比べものにならない質量に息を飲んだ。  「今日は挿れないよ」  その言葉にほっとしたのと残念な気持ちが混ざってしまう。  小さく頷くとジンは笑った。  「あまり煽るような顔をするな。決心が揺らぐだろ」  「煽るって……」  一体どんな顔をしているのだろうか。頬を両手で包まれて唇にキスをされる。  それだけでお腹の底がきゅっとした。  「ゆっくり進めていこうな」  「うん」  「でもこれをどうにかしないと」  また腰を揺すられ、猛った雄がルイスの性器を擦る。布越しがもどかしくなるほどだ。 それはジンも同じだったらしくボトムスと下着を一緒に脱ぎ捨てた。  眼前に晒された屹立の逞しさに喉が鳴った。亀頭から先走りが垂れている。  「手を貸せ」  おずおずと手を差し出すとルイスとジンの屹立を一つにまとめて手のひらに包んだ。  ジンの指の関節が柔らかい皮を擦り、嬌声が漏れる。 ジンは二つ一緒にして上下に扱く。  擦れあう性器とジンの手の熱に浮かされて涙がこぼれた。  「あっ、あぁ、んん」  「可愛い、ルイス。好きだ。大好きだ」  「ジン……好き。あぁ、あっ、もう ……ダメ」  「一緒にイこうな」  腹の底がきゅうと締めつけられたのと同時に果てた。腹に熱い飛沫がかかり、びくりと身体が震える。  最後の一滴まで出すようにやんわりと扱かれるので、イってる感覚が長い。  身体が痙攣して力が入らなくなりジンの胸板にもたれた。 全力疾走したあとのように呼吸が荒い。ジンの吐息が頬に触れるだけで屹 立がまた熱を帯びてしまいそうだ。  背中に腕を回してキスをねだった。  すぐに応えてくれたジンの腕に抱き込まれて、しばらく幸福の余韻に浸っていた。  

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