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第38話

 薬草に関する本を読んで勉強をしていたらあっという間に三日が経ってしまった。  荷物をまとめるルイスをよそに、アドルフは呑気に紅茶を飲んでいる。  「アドルフは本当にまだ戻らないの?」  「うむ。学園にいてもやることはないしの。それに邪魔者がいない方がいいじゃろ」  「邪魔者って……」   頬が勝手に熱くなるルイスを見て、アドルフは頭を撫でてくれた。  「少し効果が弱っているようじゃな」  「金髪に戻ってる?」  「いや、黒いままじゃが、光に反射すると金色に見える。これも持っていきなさい」  なにか誤魔化された気もするが小さな袋を受け取った。髪色を黒く染める薬だ。  一回塗れば半年は黒髪のままでいられるらしいので、そろそろ効果が切れるころなのかもしれない。  「じゃあ行ってくるね。学園で待ってるよ」  「気をつけてな」  アドルフに見送られて小屋を出た。竜脈を抜けるとまたあのときの違和感がある。  腹の底が熱くなるような、むずむずするような変な気分。いままで感じたことのないので正体不明の感覚に怖くなり、走って街まで 向かった。   一人で街中を歩くのは忌み子と呼ばれてから初めてだったが、ジンが学園で待っているかもしれないと周りのことを気にする余裕もなく走り抜けた。  貴族棟へ入るとほとんどの生徒は家に帰省していてがらんとしている。  でも万が一残っている生徒がいるかもしれず、出くわさないように隠れながら部屋に向かった。  扉を閉じてようやく人心地ついた。  まだジンは来ていない。風呂に入ってさっぱりして落ち着き なく部屋を右往左往しながらジンを待つ。  (会ったら抱くって言ってたもんね)  しっかり準備もした。風呂も入った。 まさしく食べられるのを待ち侘びている状態だ。  まだ来ないかなと応接室をウロウロしていると日が沈み、夜が来てようやくルイスはソファに座った。  ーージンが帰って来ることがないまま朝を迎えた。

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