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5.ごめんね

「だからね、もう二人で来ることはないんだ。僕はきっと彼の未来に必要の無い…ううん、邪魔な存在だったんだと思う」 多分僕は、ちゃんと笑えていると思う。 ショックを受けているようだとか、絶望に打ちひしがれているだとか、そんな風には見えない筈。 だけど目の前の皐月くんは目を大きく見開いて、その瞳を溢れる涙で光らせるんだ。 「えへへ、ごめんね」 「っ…んでっ、謝んだよぉっ…」 僕の代わりにしゃくりあげて泣いてくれる皐月くん。 優しい君を、泣かせちゃってごめんね。 「だって…っ、だってっ、ヘンっ…!」 何か伝えようと嗚咽を漏らす皐月くんに、神妙な面持ちでマスターがティッシュを渡す。 マスターにも、聞かれちゃった。 「ここっ、いるとき…っ、しあわせそうだった!」 「でも、彼はノンケだから。僕のことが、重荷になったのかも」 「俺だって…っ、ノンケだもっ」 そう、皐月くんはノンケ──男の人に興味の無い、元は女の子が好きな人だったらしい。 今は、男性でも女性でもなく、彼のパートナーであるローズのオーナーの事だけが恋愛対象なんだって言うのが、皐月くんの言葉。 僕は昔から女の子には興味が無くて、男の子ばかりを好きになっていたから…。 ずっと、好きだなんて伝えられなくて、……でももし僕がストレートでも、女の子を好きになったとしても、やっぱり気持ちを伝えることは出来なかったかなって思う。 だって、僕なんかに好かれてるって知っても、嬉しくないでしょ?気持ち悪いなって、きっとそう思う。

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