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6.出会い

柊くんと会ったのは大学に入ってからで…… 入学式の日、桜の花の下。 写真を撮ろうと集まってきた団体に巻き込まれて転びかけたのを助けてもらったのが、初めての接触。 次に会ったのは廊下で、走る人にぶつかられてまた転びそうになっていた所を柊くんが支えてくれた。 「あ…、ありがとうございます…っ」 「いや。…ん?お前……。足捻ったりしてないか?」 僕は背が低くて華もない、目立たない人間だから、普段ぶつかられて転んだところで誰が助けてくれるわけでもない。 だけど柊くんは転ばないように掴まえてくれたどころか、顔に手を伸ばして、 「ほら、メガネずれてんぞ」 メガネを真っ直ぐに直してくれたんだ。 「えっ…あっ、あっ!ごめんなさいっ!」 「なに謝ってんだよ。…にしても、デケーメガネだな。顔とサイズ合ってなくね?」 ひょいとメガネを取り上げられて、慌てて両手で顔を覆った。 「なんで隠すの?」 だけど、その手のひらさえ彼は顔から外させてしまう。 「あのっ…僕っ、人を不快にさせる顔、してるっ、から…そのっ」 顔を伏せようとすれば、両頬を手で包まれ、逆に覗き込まれて…… 「何が?可愛いじゃん」 「えっ…?」 「強いて言えば、女の子は不快になるかもなぁ…?自分より可愛すぎて?」 「えぇっ?!」 この人は…何を言ってるんだろう? 僕が暗くて、友達もいなさそうな奴だから、変なことを言ってからかってる? そんなことを思って、僕は彼に不審げな視線をぶつけてしまっていたんだろうか。 「悪ぃ悪ぃ、謝るから、そんな目で見んなって」 メガネをかけ直したその手で、頭をくしゃっと撫でられた。 「シュウーっ、そろそろ行くぞ」 友達だろうか。少し軽い感じの人に呼ばれて、手を上げて答えるその人。 …まあ、ね。こんな暗い男に可愛いなんて言う人だ。 女の子にだって同じ言葉を掛ける、チャラ男って呼ばれる類の人なんだろう。 そもそも、僕なんかにも優しく接してくれる事からしておかしい。 きっと友達と知り合いの数を張り合ってるような、…ほら、良く居るフェイ○ブックの友達何百人、インス○グラムのイイネの数を競ってるような、街を歩けば右見ても左見ても友達で溢れてる、そう言う類の人なんだ。 たまたま目に入ったから助けただけで、それだって周りから良く思われたいからやっただけ。入学式に助けた相手も僕だなんてこと、きっと気付いてなんかいない。 「俺、秦野(はたの) 柊一(しゅういち)、1年。お前は?」 「平井(ひらい) (しのぶ)、1年生です」 名前を名乗ったことだって、訊かれたことだって、大した意味はない。 もしかしたら、秦野くんはこんなに良い人だったよって宣伝しておいて欲しいのかもしれない。 だけど入学から1ヶ月経った今だって、校内に僕の友達は居ない。 「じゃ、またな」 「あの…っ、ありがとうございましたっ」 頭を下げると、また髪をくしゃりと撫でられた。 「俺現役だし、タメか、お前のが年上だろ?敬語とかいいって、忍」 「っ……!?」 ナチュラルに僕の下の名前を呼んで、軽く手を振ると、彼は友達が沢山居る場所へと去っていった。 茶髪の人、金髪の人、メイクバッチリの女の子達。楽しいことを沢山知ってる、リア充って人たちだ。 僕とは違う人種の人。

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