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10.相談

「…あっ……」 「忍?どうした?」 「…なんでもない」 カクテルのピンクの部分が口に入り込んで、急に甘くなくなったからビックリしただけ。 ピンクなのに甘くないんだ、とかちょっと考えたけど… 隠す必要もないことなのに、今日の柊くんはどこかいつもと違うから、なんだか話し辛い。 飲みに誘ってくれたのは柊くんの方だし、昼間もスイーツ食べ放題を「お祝い」ってご馳走してくれた。 だから、僕と一緒に居たくなくて様子がおかしい訳じゃないんだと思う。 でも、そうしたら…… バレないようにチラリと見上げる。 柊くんは、グラスに差してあったライムを手に、中をグルグルとかき混ぜていた。 目は忙しなくキョロキョロして、時折動きを止めては小さくため息をつく。 それから僕を見て、目が合えば逸らして、また息を吐き出す。 何か相談したいことでもあるんだろうか? 人の友達のことを悪く言う訳じゃないけど、柊くんの他の友達って、他人の悩みを真剣に聞くってイメージの人たちじゃ無いもんね。 なら、ヘンでも、いつもと違っておかしくても、大好きな柊くんの悩みごと、僕が聞く他無いじゃないか。 それが、こんな風にキョドっちゃうような、恋の悩みだとしても。 ……きっと、そういう事なんだろうと思う。 でも、相手が普通の女の子の時はこんな風にはならない。 付き合いは長いわけじゃないけど、少なくとも出会ってからの柊くんは、女の子相手に心乱されて動揺する人じゃなかったから。 だから相手はきっと、友達の彼女だとか、大学の職員? ……もしかして、そこの綺麗なバーテンさんかも。 ああ、そうか…。だから僕のこと、ここに連れてきたんだ、きっと。 あの人のことが好きだから、協力してくれない?ってこと…? 「…うー……」 僕が柊くんのことを好きだからって、柊くんが僕のことを好きになってくれる……そんなこと、ある筈がない事はわかっていたけれど…… やっぱり、恋が終わってしまう時は心が痛い。 痛くて、悲しくて、涙が溢れる。 いつも言えずに終わってしまう、僕の恋。 今回も、結局僕の中で燻っただけで、無かったことにされてしまうんだ。

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