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11.応援

「えっ…、忍…!?」 僕の涙に気付いた柊くんが、涙を拭おうとした僕の手を取った。 「どうした?嫌だったか?俺…」 「ううん」 首を横に振る。 「大丈夫…。僕、…応援するから」 「応援?…あ、うん…」 僕が気付いたことが、分かったのだろうか。 柊くんは顔を赤くして、ぼそりと呟いた。 「いや、俺さ、……女が、好きなんだけど…」 「…知ってる」 「それより…可愛いなとか、俺のものにしたいな、とか」 「…うん」 綺麗だもんね…。 見つめていたカクテルグラスから視線を外し、別のお客さんと話すバーテンさんの姿を眺めた。 あの人だったらね…、納得。 男が好きじゃなくっても惚れてしまう。 綺麗で、優しそうで、色っぽくて…。 僕は男の人が好きだけど、多分抱かれたい方───ネコだと思う。 そういう機会が今まで無かったからただの憶測だけど、可愛い人より格好良い人のほうが好きだから、きっと僕はそっち側。 バーテンさんは柔らかそうなイメージで、そりゃあ女の人にはそういう事もするんだろうけど、この人に全部預けたいって男が思うようなタイプじゃない。 だから僕は、綺麗で良いな、と憧れはすれど、そう言う意味では好きにならないと思う。 「忍は、さ…、男が男を好きって、どう思う…?」 「…別に、いいんじゃないかな…」 僕自体がそうだし…、なんて、言える訳がないけど。 「…じゃあ、さ…、俺が、す…き…つったら…?」 ……やっぱり…ね。 やっぱり柊くんは、あの人のことが好きなんだ…… 「…応援…する…っ」 「あの…さ、応援…って、…なんか、泣いてっし…」 「ごめ…っ、これ、は…びっくりしちゃって…」 目をゴシゴシ擦ると、またその手を止めるように握られた。 「目、擦ると腫れるぞ」 「眼鏡…するから、いい…ヘーキ」 「メガネはもうやめる約束しただろ。そのまんまの顔のが絶対可愛いんだからさ、忍は」 「可愛くない。ブサイクだよ」 「うるさい。お前がどう思ってても、俺には可愛いの」 いつの間にか柊くんは、いつもの柊くんに戻ってた。 自信に満ち溢れてて、ちょっと俺様な感じの、だけど優しい柊くんに。 袖で涙をグイって拭われる。 頭をぽん、ぽんって。 それはきっと、彼の癖なんだろう。 女の子にもしてるとこ、何度も見たことがある。 彼女にも、そうじゃない子にも。 他の人たちと話していても、こんなに目立たない僕を目敏く見つけて駆け寄って来てくれる。 だけど、それは僕が特別だからじゃなくて、僕が特別に心配な奴だから。 だから……… 「忍は、俺のこと好き?」 「好きだよ。…柊くんは、優しい…ともだち…で…」 「友達さ、…もう、やめない?」 「え……?」 「やめよう、友達」

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