12 / 93
12.うそつき
ポタ……ぽたぽたぽた…
目から溢れた水分が、だばだばとカクテルグラスに吸い込まれていった。
青とピンクと透明が混じった紫色はとても綺麗だけれど、きっとしょっぱくなったそれはもう飲めたものじゃないだろう。
友達だった最後の日に、最後の最後にもらったプレゼントなのに……。
「…で、さ、忍。俺と付き合おう。友達じゃなくてさ、恋人として。
俺の思い上がりじゃなかったらさ、お前、俺のこと好きだろ。俺も好き。
ずっと言い聞かせてたんだけどさ、忍は友達だって。けど、お前が誰より可愛くて、誰と付き合っても、どんな可愛いって言われてる女の子と遊んでも、お前が一番可愛いんだもん。
もうこれ、認めざるを得ないだろ、忍が好きだって」
………?
急に早口で捲し立てるから、理解が全く及ばない。
言われてることを半陶する前に、新しい情報が次々と入り込んでくる…から、……訳がわからない。
「だ…って……、柊くんは、リア充の人で…、僕なんかより…」
「僕なんかって言わないの」
怒られた……。
「忍、好き。付き合うって認めないと、俺、泣いちゃうぞ?」
ん?って覗き込んでくるその瞳は、いつも通りのようでいて、だけど少し揺れ動いてる。
でも、わからない。
僕の目が滲んでいるから、そう見えるだけなのかもしれない。
「っ…そんなこと…いま、だけ…、ぜったい、まちがえたって…っ、おもうっ」
「思わない。だって俺、忍のこと好きだもん」
「おもう…からぁっ」
「思わないって。これ、もう飲まないならもらうぞ」
「えっ、…えっ、やだっ、きたない!」
「汚くないだろ。んっ…、ゴクン。…ははっ、忍の涙味」
「やだってばぁっ」
………うそつき。
間違えたって思わないって、そう言ったくせに。
ともだちにシェアしよう!