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12.うそつき

ポタ……ぽたぽたぽた… 目から溢れた水分が、だばだばとカクテルグラスに吸い込まれていった。 青とピンクと透明が混じった紫色はとても綺麗だけれど、きっとしょっぱくなったそれはもう飲めたものじゃないだろう。 友達だった最後の日に、最後の最後にもらったプレゼントなのに……。 「…で、さ、忍。俺と付き合おう。友達じゃなくてさ、恋人として。 俺の思い上がりじゃなかったらさ、お前、俺のこと好きだろ。俺も好き。 ずっと言い聞かせてたんだけどさ、忍は友達だって。けど、お前が誰より可愛くて、誰と付き合っても、どんな可愛いって言われてる女の子と遊んでも、お前が一番可愛いんだもん。 もうこれ、認めざるを得ないだろ、忍が好きだって」 ………? 急に早口で捲し立てるから、理解が全く及ばない。 言われてることを半陶する前に、新しい情報が次々と入り込んでくる…から、……訳がわからない。 「だ…って……、柊くんは、リア充の人で…、僕なんかより…」 「僕なんかって言わないの」 怒られた……。 「忍、好き。付き合うって認めないと、俺、泣いちゃうぞ?」 ん?って覗き込んでくるその瞳は、いつも通りのようでいて、だけど少し揺れ動いてる。 でも、わからない。 僕の目が滲んでいるから、そう見えるだけなのかもしれない。 「っ…そんなこと…いま、だけ…、ぜったい、まちがえたって…っ、おもうっ」 「思わない。だって俺、忍のこと好きだもん」 「おもう…からぁっ」 「思わないって。これ、もう飲まないならもらうぞ」 「えっ、…えっ、やだっ、きたない!」 「汚くないだろ。んっ…、ゴクン。…ははっ、忍の涙味」 「やだってばぁっ」 ………うそつき。 間違えたって思わないって、そう言ったくせに。

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