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21.記憶【柊一Side】

先に風呂を貰って出ると、明理が、俺が寝るのは自分の部屋でいいだろうと言ってきた。 「は?嫌だよ。あ、俺ここのソファー借りていいですか?」 律子さんに振ると、「何言ってるのあなた達は!」と纏めて怒られ、明理は更に頭もはたかれた。 「客間に布団敷くから、柊一君はそこで寝なさい。明理、アンタは客間に近付くんじゃないわよ。それよりさっさとお風呂入って来なさい」 「…はーい」 渋々風呂に向かう明理を見送りながら、さっさとその厚塗り落としてこい、と心の中で悪態をついた。 やっぱり、忍とは友達だったんだろうか。 アイツのことを悪く言われたのが、無性に腹立たしかった。 客間でスマホアプリを弄ってると、襖の外から声が掛けられた。 「柊一く~ん、入るね~」 「あ?」 入るね、じゃねーよ。開けて良いなんて一言も言ってねえだろーが。 「ねーねー、アタシの部屋来ない?」 「は?なんで?」 しかも、剥いできたと思った顔の塗り物は、風呂上りにまた新たに塗装されてる。 はいはい、ブサイク隠しゴクローサン。 俺は素顔が可愛い女が好きなんだよ。メイクで隠そうが整形で顔変えようが、結局産んだ子供に出んのは元のブッサい顔だろーが。 俺の子供がブサイクとか、マジ有り得ねぇ。結婚すんならぜってー元の良い女。 俺と付き合いてーんなら、お前も素顔晒して寄って来い。 もしかしたらその化けの皮剥がしたら、忍みてーな可愛い顔が隠れてるかもしんねーもんな。 だがそんな心のつぶやきが聞こえるでもなく、明理はなんだかんだ言って俺を部屋に誘い続ける。 「ほら、部屋見たらさ、なんか思い出せるかもしんないじゃん!」 めんどくせー…けど、でもまあそれもそうだなと、明理の部屋に行ってみることにした。 で、行ったところで結局何も思い出すこと無く、ベッドに座れというなりスウェットを下ろされちん○を食われたわけだ。 まあ…な、胸は良い、胸は。 けど、こんなだったっけ、俺のカノジョ? デコの髪をどかして上を向かせるけど、 「……チッ」 ピンと来ねえ。 もっと蕩けた顔して、時々えづいたりしながら一生懸命しゃぶってた気がすんだけどな…。 すっげー興奮して、今すぐ突っ込んで滅茶苦茶に犯してぇって本能抑え込んで、満足するまで舐めさせてやって……… 記憶のフェラには遠く及ばない。むしろ、まったくの別物みてーだ。 でもまあ俺も男だから、女にしゃぶられれば出る物も出るってもんで…。 「ウエットティッシュ」 「え…?」 「持ってねーの?じゃあタオル濡らして来いよ」 「えっ、や…、あるけど…」 渡された紙で唾液を拭き取る。 ボーッとしてる明理を押しのけて立ち上がった。 「えっ、うそ!どこ行くの!?」 「客間に戻んだけど」 「うそ!イカせてやったじゃん!」 「気分じゃねーし。ヘタクソ」 つか、お前じゃ勃たねーし。…つーのは、言ったらめんどくせー事になりそうだから飲み込んで。 にしても、誰だったんだ、あの記憶は。 すっげー体の相性良かった奴がいた筈なんだけど。 マホ、ユウナ、アイカ…、大学入ってからじゃねえのかな? 駄目だ。顔が思い出せねえ…。 これも部分健忘ってやつの所為なのか───?

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